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京都和菓子歳時記−2016年6月−・きょうの『和菓子の玉手箱』

和菓子歳時記ー2016年6月ー

和菓子ライフデザイナー小倉夢桜−Yume−が
ご紹介する京都の素敵な和菓子の世界。
新たな京都を感じてみませんか。

ギャラリー

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2016年6月1日

菓銘『早苗』
愛信堂
京都市上京区元誓願寺通堀川西入る南門前町426
(075)411-8214


2016年6月が始まりました。
旧暦では、6月は『水無月』。
水が無い月と書きますが、『な』は所有格を表す後置詞で「水の月」を意味します。
ここまでで、「あの、お菓子ね!」と思われる方もいらっしゃることでしょう。

でも、今回は三角形のあのお菓子ではありません。
あのお菓子のご紹介はまたの機会に!

この時期、水と関わりの深いものの一つに田植えが挙げられます。
田に水が入り、若苗を植える時期です。
先日、美山町を訪れましたが、田には整然と若苗が植えられて、佳き日本の光景を目にすることができました。
その光景を見ているだけで心が癒されます。

6月に入り、田植祭が各所で行われます。
そのひとつが『伏見稲荷大社』です。
現在では、伏見稲荷大社は商売の神様として有名ですが、そもそもは『稲荷』とは稲を荷つぐという意味で農耕の
神様です。
伏見稲荷大社では、6月10日に田植祭が執り行われます。
『ご料米(ごりょうまい)』と呼ばれる神事に使われる神聖なお米の早苗を田に植え五穀豊穣を祈願する御祭です。

今回、ご紹介するお菓子は、その田植を題材にした意匠です。
黒糖きんとんを田に見立てて、若苗が整然と植えられている様子を表現したお菓子です。
黒糖には、波照間産の黒糖を使用しているため、黒糖独特のとがりのある甘みではなく、まろやかな甘みに仕上がっ
ています。

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2016年6月8日

菓銘『あじさい』
菓子司・山もと
京都市東山区東大路渋谷通上がる常盤町459−1
(075)561-2250


6月となり、各地の梅雨入りの話題を耳にするようになってきました。
気象庁の発表によれば、京都は4日に梅雨入りとなったそうです。
テレビを見ていると、『ジメジメとした梅雨の嫌な時期・・・・・・』という表現がよく使われていますが、
そのように感じるかは心の持ち方一つのような気がします。

傘に弾けるやさしい雨音は心地よく、雨が降っている京都の光景はどこを切り取っても情緒があり、
とても画になります。

そして、梅雨の時期に心を癒してくれるのが紫陽花。

寺社のみならず、ご家庭のお庭やお店の玄関先で可憐に咲いている紫陽花は、もしかすると桜よりも身近で
皆さんが好きな花なのかもしれません。
紫陽花は、華やかな外観から西洋の花のように思われがちですが、実は万葉集にも登場する日本古来の花です。
紫陽花の魅力は、丸く可愛らしい『手まり咲き』と呼ばれる姿と、紫陽花の別名『七変化』と呼ばれるように、
時間の経過とともに花弁の色が変化していくことです。
 
その理由はアントシアニンという紫陽花に含まれる色素と補助色素。そしてアルミニウムのバランスによってもたら
されています。
咲き始めは黄緑色。
そこから、アルミニウムが含まれている花は青色に。
そして、アルミニウムが含まれていない花は赤色へと変わります。
その後、紫へと移り変わります。
この事は、紫陽花が育てられている土壌のpH度に関係しているそうです。
簡単に言えば、『酸性であれば青、アルカリ性あれば赤』と言われています。
少し化学的な話題になってしまいましたが、不思議な魅力ある花には違いありません。

今回、ご紹介するお菓子は、その紫陽花の意匠です。
きんとん製の紫陽花の上に散りばめられた錦玉。
しっとりと雨に濡れる風情を感じるお菓子です。
今年の梅雨を楽しんでみませんか。

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2016年6月15日

菓銘『あじさい』
中村軒
京都市西京区桂浅原町61
(075)381-2650


今年の3月より始まりました【月刊京都版 きょうの『和菓子の玉手箱』】。
早いもので、今回が16回目の連載となります。

今までは、あまり私自身の事について触れてきませんでしたが、今回は私の想いをお届けします。

写真のお菓子をご覧になり、みなさんはどのように感じられたでしょうか。
「わぁ、キレイ」、「美味しそう、食べてみたい」、「涼しげで、この時期にぴったり」など、
感想は様々だと思います。
実は、こちらのお菓子との出会いがきっかけとなり、現在の活動を行なっています。

和菓子ライフデザイナーとして活動している私ですが、「和菓子屋さんの方ですか?」というご質問を
よくいただきます。
答えは、「和菓子屋ではなく、ただの和菓子好きです」
しかも、数年前までは、上生菓子の世界を知りませんでした。
そのような私が、写真のお菓子に出会ったのが四年ほど前。
初めて見た錦玉で作られた紫陽花のお菓子。
あまりの素晴らしさに見惚れて食べることを忘れるほどでした。
それ以降、和菓子屋さんに通いつめる日々が始まりました。
四季折々の情景や花を題材にしてお菓子を作られている事を知り、そのお菓子に込められている想いを存分に
感じる為に、毎朝、京都市内を取り囲んでいる山々の様子を見ることが日課となりました。

そして、様々な寺社に一年を通して訪れるようになりました。
お菓子をきっかけとして私の人生は大きく変わりました。
『花鳥風月を楽しむ人生』によって、小さな幸せが満ち溢れるような毎日となりました。
今の時期は、『紫陽花』。
様々な紫陽花を見て、そして、紫陽花のお菓子をいただいて毎日を楽しんでいます。
お菓子がもたらしてくれた幸せ、『手のひらの幸せ』。
その『手のひらの幸せ』を、みなさんにお裾分け。

一人でも多くの方に『手のひらの幸せ』に共感していただける事を願い、このような活動を行っています。

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2016年6月22日

菓銘『沙羅双樹』
亀屋重久
京都市右京区谷口梅津間町
(075)461-7365


梅雨真っ只中のこの季節、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。
京都には、“この時期だからこそ”のお寺が沢山ありますが、その一つがこちらです。

京都駅よりJR嵯峨野線に乗り嵯峨嵐山方面へ。
車窓から見える京都の風景を見ながら電車に揺られて約10分。
四つ目の駅『花園駅』で降り、北東へ歩いて5分ほどで妙心寺の南総門に到着します。
立派な南総門から境内に一歩足を踏み入れると、そこには広大な敷地が広がり、伽藍が立ち並んでいる光景は、
まるで時代を遡ったかのような錯覚に陥ります。

この日は雨。
雨に濡れた石畳に誘われるように、傘を差した人々が向かった先には、妙心寺の塔頭寺院の一つ『東林院』。
お寺の入り口にかけられている『沙羅双樹の寺』と書かれた掛札。

普段は非公開ですが、沙羅双樹(ナツツバキ)の咲く、この時期に『沙羅の花を愛でる会』と題して一般公開が
行われています。
沙羅双樹といえば、『平家物語』冒頭の『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の
理をあらわす・・・・・・』。
誰もが知っている有名な一節です。
この平家物語の冒頭に出てくる『沙羅双樹』とは、ナツツバキのことです。

本来の沙羅双樹は、熱帯に育つ樹木で日本では自生することがない為、朝に咲いて夕方に落花する一日花の
ナツツバキの儚さを日本では沙羅双樹にたとえているそうです。

苔むした庭園に植えられたナツツバキの鮮やかな白い花が夕刻には苔の上に落ちて最期を迎える光景に、つい人生を
重ね合わせてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、妙心寺北総門前に佇むお店のお菓子をご紹介させていただきます。

苔むした庭園に落ちる沙羅双樹の花。
その様子を抹茶餡のそぼろを苔に見たてて表現したきんとん製のお菓子です。
沙羅双樹の儚さをお菓子からも感じてみてはいかがでしょうか。

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2016年6月29日

菓銘『水無月』
松壽軒
京都市東山区松原通大和大路西入弓矢町19-12
(075)561-4030


早いもので一年の半分が過ぎようとしています。
明後日からは文月。
気分はもう既に祇園祭へと向かってしまっている私です。

祇園祭好きとしては、7月を目前に控えた、ここ数日間がたまらなく大好きです。
その祇園祭の前に大切な習わしがあります。
一年のちょうど折り返しにあたる6月30日、この半年の罪のけがれを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事
『夏越祓(なごしのはらえ)』が各神社で行われます。

神社境内に飾られた茅(ちがや)を束ねて作られた大きな輪を『水無月の夏越しの祓する人はちとせの命のぶ
というなり』と唱えながらくぐる『茅の輪くぐり』を行います。
茅の輪をくぐり抜けると、夏の疫病や災厄から免れるといわれています。
その『夏越祓』にいただくのが、六月の代表的な和菓子であります『水無月』です。
水無月は白の外郎生地に小豆をのせた三角形のお菓子です。

最近では、外郎生地に抹茶や黒糖などの味がついた様々な水無月もありますが、やはり、まずは白い外郎生地の
水無月をいただきたいものです。
その理由は、この外郎と小豆にはそれぞれの意味があります。
小豆には悪魔払いの意味があり、外郎で模られた三角の形は暑気を払う氷を表しているといわれています。
その昔、旧暦の6月1日は『氷の節句』といわれ、室町時代には幕府や宮中で年中行事とされていました。
『氷室(ひむろ)』(現在の北区西賀茂地区)で冬に製造して貯蔵させていた氷を御所に取り寄せて口にして
暑気を払ったそうです。
しかし、庶民にとっては夏の水はとても貴重で、氷はそれ以上に貴重で簡単に手にいれることはできず食べられる
ものではなかったそうです。

そこで、氷をかたどったお菓子が作られるようになりました。
それが水無月の始まりだそうです。
その当時の人々の夏の氷に対する憧れが水無月には詰まっていると言っても過言ではないのかもしれません。


profile

小倉 夢桜−Yume− (おぐら ゆめ)

京都在住。
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファーとして、四季折々の京都を発信。
手のひらにのせた和菓子から小さな幸せを感じ、『手のひらの幸せ』をより多くの方に伝えたい!
その想いから2012年より、自身が立ち上げた【きょうの『和菓子の玉手箱』】。
こちらでは京都の素敵な和菓子たちの世界を毎日お届けしている。
立ち上げて以来、自身が食べた和菓子の数は数千個に及ぶ。
数々の和菓子を見て、食べて感じた経験を活かして、テレビ番組製作の監修をはじめ、執筆活動や講演など
京都の和菓子をより多くの方に身近に感じていただく活動を行っている。
現在は月刊京都(白川書院)で【月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』】を連載中。


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