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京都和菓子歳時記−2016年8月−・きょうの『和菓子の玉手箱』

和菓子歳時記ー2016年8月ー

和菓子ライフデザイナー小倉夢桜−Yume−が
ご紹介する京都の素敵な和菓子の世界。
新たな京都を感じてみませんか。

ギャラリー

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2016年8月3日

菓銘『もらい水』
紫野源水
京都市北区小山西大野町78-1
(075)451-8857


【朝起きて井戸に水を汲みに来てみると、朝顔のつるがつるべに巻きついていて水が汲めません。
切ってしまうのがかわいそうなので、近所に水をもらいに行きました。】という内容の俳句です。
その俳句から名付けられているのが今回のお菓子です。

朝顔に朝露がついた情景を一粒の錦玉をあしらうことによって表現しています。
貴重な丹波産の白小豆を使用した白こしあんを練切りで包んだお菓子です。

『銘』を聴き、お菓子を愛でていると、爽やかな陽射しを浴びて美しく咲いている朝顔の情景が
目に浮かびます。
そして、朝顔のツルを切らずにそのままにしておいた加賀千代女の心の優しさを感じてとても
気持ちが和みます。

口の中に広がる優しい風味豊かな白小豆の味は、まさにこの俳句そのものです。
お菓子の『銘』の意味が解らない場合は、遠慮なさらないでお菓子屋さんに訊ねてみては
いかがでしょうか。
『銘』の素晴らしさを知っていただき、お菓子と関わっていただくと、新たな世界が広がって
くると思います。

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2016年8月10日

菓銘『遠山』
聚洸
京都市上京区大宮寺之内上ル
(075)431-2800


今週に入り、迎え鐘が鳴り響く京都市内。
鐘の音を聞く度に、この時期らしい風情を感じると共に、ご先祖様に想いを馳せながら過ごしています。
京都市内では、この時期になるとご先祖様を迎える行事が『六道まいり(六道珍皇寺)』をはじめとする様々な
お寺で執り行われます。
そして8月16日には、五山に炎が灯り、あの世からお盆で迎えたご先祖様を極楽浄土へと迷うことなく送る大切な
行事が執り行われます。
京都の8月の風物詩として大勢の方々が『五山の送り火』を観ようと他府県からお越しになられます。

観光行事のような感覚で賑やかに観覧されることには少し抵抗を感じてしまうのが、私の正直な気持ちです。
京都で長年の間『五山の送り火』に関わる方々にとっては、送り火を見て、心穏やかにご先祖様のことを想い、
別れを惜しむ大切なひと時です。
どうかお一人でも多くの方がその事を理解して、騒がずに心穏やかに『五山の送り火』を観ていただくことを切に
願います。
今回は、その『五山の送り火』にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
送り火の意匠のお菓子は、この時期になると様々なお店から販売されています。
代表的なお菓子の一つに、この時期らしく、葛で『大』を包んだものがあります。

しかし、こちらのお菓子は葛製のお菓子ではありません。
実はこちらのお菓子は、暑いこの時期にお客様に冷めたく召し上がっていただけるように私がお店にお願いして
作っていただいたものです。
あえてこちらのお菓子をお願いしたのには理由があります。

葛のお菓子は、見た目には涼しげなのですが、長時間にわたり冷蔵庫に入れて置くと白く濁ってしまい、葛らしい
涼し気な雰囲気を損なってしまいます。
そこで、こしあんを柔らかい羽二重で包み、その周りを寒天でコーティングしてもらいました。
これで長時間にわたり冷蔵庫で冷やすことが可能になり、冷たいお菓子をお客様に召し上がっていただくことが
できます。
嵐山の法輪寺から、はるか遠く、東の方角に見える東山如意ヶ嶽の『大文字』を表現しました。
そこから付けた銘が『遠山』です。
何度か試作をしていただき完成したお菓子がこちらです。


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2016年8月17日

菓銘『とんぼ薯蕷』
嵯峨嘉
京都市右京区嵯峨広沢御所ノ内町35-15
(075)872-5218


昨夜、京都の夜空に浮かんだ『送り火』。
残念ながら、悪天候の中でのご先祖様とのお別れとなりました。

しかしながら、山にともる灯りからは過ぎゆく夏のひと時を感じられたのではないでしょうか。
今週末の8月20日には、大覚寺で京都の夏の夜を締めくくる厳かな行事『宵弘法』が執り行われます。
『嵯峨の送り火』とも呼ばれているこちらの行事は、大沢池中央に組まれた護摩壇に火を灯し、お経を僧侶が
唱えご先祖様を冥界へと送ります。

僧侶が唱えるお経と共に夜空に舞う火の粉は、まるで冥界に帰って行くご先祖様の魂のようにも見えます。
こちらの行事が終わると京都の夏は終わり、いよいよ秋へと向かいます。

今回は、夏から秋へと移り行く光景を感じることができるお菓子をご紹介させていただきます。
大沢池や広沢池の水面が太陽に照らされてキラキラと光る中、気持ち良さそうに飛び交うトンボ。
トンボを数多く見かける時期となってきました。

真っ白な薯蕷饅頭に可愛らしいトンボの焼印。
秋の気配を感じずにはいられない意匠のお菓子です。
まだまだ暑い日々が続きそうですが、お菓子から季節の移ろいをひと足早く感じてみてはいかがでしょうか。

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2016年8月24日

菓銘『ニコニコ饅頭』
中村軒
京都市西京区桂浅原町61
(075)381-2650


先日の土曜日と日曜日。
お地蔵さまが祀られている祠(ほこら)が提灯などで飾り付けられた周りで、地域の子供たちが楽しそうに過ごして
いる姿を数多く見かけました。

本日8月24日は、地蔵菩薩の縁日。
各町内に祀られているお地蔵さまに感謝をして、その地域の子ども達が無事に成長することを祈る行事を8月23日、
24日に『地蔵盆』として行います。
今では、参加する子供たちや大人たちの事情に合わせて、その前後の土曜日と日曜日に行うようになって
きています。
さらに、近年では、子供の数が減り、二日間行っていた地蔵盆が一日だけしか行わない、地域もあるようです。

京都市内では、先日の土曜日と日曜日に多くの町内で地蔵盆が行われました。
お地蔵さまを祠(ほこら)から出して、綺麗に着飾り、たくさんの花や果物などをお供えして提灯を飾ります。
飾り付けられた祠の前では、お坊さんの読経が始まり、お坊さんを取り囲むように集まった地域の子供たちと
大人たちも手を合わせてお地蔵さまにお祈りをします。
その後、子供たちは、そのお地蔵さまの前で見守られながら、色んなゲームをしたり、お菓子を食べたりして一日を
楽しみます。

町内によっては、お坊さんの説法を聴いたり、数珠操りを行ったりするところもあります。
地蔵盆は、子供たちが楽しむ場であると共に、希薄になってきたといわれる地域住民の繋がりを保つ役割を担って
いる大切な行事でもあります。

今回は、その『お地蔵さま』にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
そもそもは、お地蔵様の日にお店の方が慕っている小浜にある佛国寺の和尚さん(原田湛玄老師)の為に作った
お菓子だそうです。
お菓子をいただいた和尚さんが、詩と共に付けた菓銘が『ニコニコ饅頭』です。

『御地蔵様に守られ
 お地蔵様のように
 いつもニコニコ
 あたたかい心で
 親切に
 すべてにつくしてゆく
 ニコニコまんぢう』

お地蔵さまをモチーフにした黒ごまの風味が口の中に広がるお饅頭。
お地蔵さまの優しさを感じることができるお菓子です。
和尚さんがお店の方に贈られたコチラの詩を思い浮かべながらいただけば幸せが訪れること間違いなしですね!


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2016年8月31日

菓銘『こぼれ萩』
長生堂
京都市左京区下鴨上川原町22-1
(075)712-0677


早いもので明日からは『長月』。
長月の語源は諸説ありますが、夜が徐々に長くなる『夜長月』が略されたそうです。

そして、明日は新月。
これから満月へと向かう月明かりの下で心地よい秋の虫の音に癒されながら過ごすことができる日々。
今年も存分に秋の夜を楽しみたいものですね。
これからの時期、秋を感じる花といえば、秋の七草の一つでもある『萩』を私は真っ先に思い浮かべます。
しなやかに枝垂れた枝葉に、わずかに青みがかった赤紅色の花を見かけるようになってきました。

見頃に至るまでは、まだまだ時間がかかりそうですが、咲き始めた萩を見ていると、こぼれんばかりに咲いた
萩の花が秋風に揺れる様子を想像してしまいます。
京都で萩の名所として、多くの観光客が訪れる『梨木神社』や『常林寺』。
いずれも、見頃になると多くの萩の花が咲き、訪れる人々を魅了します。

そして、もう一つ。
土塀沿いに萩が枝垂れ、独特の雰囲気を見ることができる『迎称寺』。
非公開のため寺院内に入ることはできませんが、寺院外から何とも言えない趣きのある雰囲気を見ることが
できます。
特に雨で濡れた土塀と萩との光景は一段と情緒的で、一見の価値ありです。
天候の違いで、全く雰囲気が異なる光景を見ることができることも見所の一つです。
また、近くには真如堂があり、こちらも境内の至るところで萩の花を見ることができます。
まだ、一度も訪れたことがない方は併せて見頃の時期に訪れてみてはいかがでしょうか。

今回は、その『萩』にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
緑餡を葛で包み、いら粉を散らした意匠は、枝垂れた葉に花をつけた萩の様子を表現しています。
まだ、暑さが残るこの時期らしく、口当たりの良い葛製のお菓子となっています。
季節を少し先取りして、こちらのお菓子を召し上がり秋を感じてみてはいかがでしょうか。



profile

小倉 夢桜−Yume− (おぐら ゆめ)

京都在住。
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファーとして、四季折々の京都を発信。
手のひらにのせた和菓子から小さな幸せを感じ、『手のひらの幸せ』をより多くの方に伝えたい!
その想いから2012年より、自身が立ち上げた【きょうの『和菓子の玉手箱』】。
こちらでは京都の素敵な和菓子たちの世界を毎日お届けしている。
立ち上げて以来、自身が食べた和菓子の数は数千個に及ぶ。
数々の和菓子を見て、食べて感じた経験を活かして、テレビ番組製作の監修をはじめ、執筆活動や講演など
京都の和菓子をより多くの方に身近に感じていただく活動を行っている。
現在は月刊京都(白川書院)で【月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』】を連載中。


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