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京都和菓子歳時記−2017年1月−・きょうの『和菓子の玉手箱』

和菓子歳時記ー2017年1月ー

和菓子ライフデザイナー小倉夢桜−Yume−が
ご紹介する京都の素敵な和菓子の世界。
新たな京都を感じてみませんか。

ギャラリー

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2017年1月4日

菓銘『福梅(写真右)・酉の賀(写真左)』
鶴屋吉信
京都市上京区今出川通堀川西入
(075)441-0105


あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2017年の第一回目の【月刊京都版 きょうの『和菓子の玉手箱』】をお届けします。

今年の元日は、全国的におおむね穏やかなお天気となり、各地で綺麗に昇る初日の出の話題がニュースとして
採り上げられていました。
京都・嵐山からは、残念ながら初日の出を見ることはできませんでした。
しかしながら、大堰川のせせらぎを聴きながら、雲が赤く染まる朝焼け、そして、昇っていくと共に雲の隙間から
降り注ぐ光のシャワー。
その光景を見て、新年に相応しい清々しい気分で元旦を迎えることができました。
きっと、みなさんも素晴らしい元旦を迎えられたことだと思います。

日本全体が、一年の中で最も祝賀の雰囲気となるこの時期。
和菓子屋には、初春を寿ぐ華やかな、おめでたい意匠のお菓子たちが並びます。
迎春の代表的な縁起物として親しまれている松竹梅や鶴などを模った意匠のお菓子。
そして、その年の干支にちなんだ『干支菓子』と呼ばれる意匠のお菓子と宮中歌会始の御題を題材に
して作られた『御題菓子』。
いずれのお菓子も今年は、幸せな年になりそうという気持ちにさせてくれるものばかりです。
御題菓子の話題は、宮中歌会始の開催が近づく次回にご紹介させていただきたいと思います。
今回は『干支菓子』についての話題を少しご紹介させていただきます。
みなさんがご存知の通り、干支は『子』から始まり『亥』までの十二支ですが、そのすべてが生き物。
そこでさまざまなお菓子屋のご主人からこのような話をよく耳にします。
「お客さんから、もっとわかりやすい、可愛らしいお菓子を作らへんの?ってよう言われますねん。
干支にあたる動物を綺麗に模って作ってしもたら、新年早々、黒文字で切ってしまわなあかん。
それを口に入れてもらわなあかんなんて、そんな縁起の悪いこと御贔屓さんにさせたらバチあたりますわ。
あくまで食べ物やから。
干支菓子は焼印か抽象的な意匠にどうしてもなってしまいますねん。
時代に合わせながら京菓子の文化を大切にしていくのもなかなか試行錯誤の連続ですわ」

そういう想いで作られていることを知ると販売されているお菓子の見え方が違ってくるから不思議です。
近年、伝統を守るという言葉をよく耳にしますが、それは私たち消費者側の教養もあってはじめて成り立つ
ものだと思います。
これからは、和菓子について、より多くの知識を得て、少しでも多くのことをみなさんにお伝えできればと
思います。

今回は『福梅』と『酉の賀(とりのが)』という銘のお菓子をご紹介させていただきます。
新年に相応しく、紅白のふっくらと福々しい形をした梅を模った外郎製のお菓子、『福梅』。
そして、もう一つが先ほど話題にしました干支菓子『酉の賀』。
こちらのお店の菓銘にはいつも感心させられると共にとても勉強になります。

名付ける際には、音の響きを大切にされているそうです。
『酉の賀』に含まれている『賀』は、賀正を意味していますが、『賀』のみの意味としては、
【喜び祝うこと】です。

今年の干支である『酉』の焼印を入れ、地面を赤色で表現して紅白に仕上げた、初春に相応しいお菓子です。
今年の第1回目のお菓子は、2017年が皆様にとって佳き年となりますように願いを込めて新春にちなんだ
お菓子をご紹介させていただきました。

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2017年1月11日

菓銘『野の春』
鍵善良房
京都市東山区祇園町北側264番地
(075)561-1818


新年を迎えてから早いもので京都ゑびす神社では、今年も賑やかに『十日ゑびす大祭(初ゑびす)』が執り
行われています。
テレビのニュースでは、開門と同時に西宮神社の境内を勇ましく駆ける『開門神事福男選び』の話題をよく目に
しますが、こちら京都ゑびす神社では、京都らしくはんなりと花街の舞妓さんが福笹と福餅の授与を行います。
京都ゑびす神社では、明日12日まで行われていますのでまだの方は、福をいただきに訪れてみてはいかがで
しょうか。

今回のお菓子は、京都ゑびす神社からほど近く、祇園にお店を構えている鍵善良房さんが販売されている
『勅題菓(ちょくだいか)』のご紹介です。

まず、「『勅題菓』って何?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
新年に和菓子屋を訪れると『勅題菓』または『お題菓子』と呼ばれるお菓子を見かけます。
毎年、1月の中旬に皇居・宮殿で開かれる『歌会始の儀』。
一つの共通のお題で歌を詠み、披講する会のことを『歌会』といい、天皇陛下が年の始めの歌会として執り
行われる歌御会を『歌会始』といいます。
今年は、明後日の1月13日に行われる予定です。

京都の和菓子屋では、毎年、その『歌会始』のお題に合わせてお菓子を作るのが明治以降の慣例とされてきました。
勅題菓は、新年の祝い菓子と共に、この時期ならではのお菓子です

今回ご紹介するお菓子は、今年のお題である『野』を題材に作られました。
春を代表する『若葉色』、『桜色』、『菜の花色』の三色で構成された外郎製のお菓子です。

紀貫之が詠んだ
『春の野に 若菜つまむと こしものを 散りかふ花に 道は惑ひぬ (古今和歌集)』
という和歌を思い起こしながらといただくと、より一層味わい深いものになりそうです。

勅題菓は、毎年、様々なお題に合わせて意匠と菓銘を考えなくてはなりません。
その為、お菓子屋さんの豊富な教養と感性が問われると言っても過言ではないように思います。

以前、とある和菓子屋のご主人からこのような話を聞いたことがあります。
「勅題菓は、職人が作りたいものを作るという訳にはいかへん。
お題があり、新年らしい雰囲気も盛り込まなあかん。
また、よう分かってはるお客さんは、そのお菓子を見てお店の良し悪しを決めはったりしますねん。
そやから、勅題菓の意匠と菓銘を考えるのんは、簡単にはできませんねん」
その話からは、長年、京都で和菓子屋の暖簾を守り続けてきたご主人のプライドと心意気が私に伝わってきます。

その類の話を他のお店のご主人からもよく耳にします。
その一方で残念なことに近年では勅題菓を作らなくなったお店もあります。
その理由には、近年のお題が『静』、『本』、『人』などお菓子を作るには難しいお題が続いたという理由。

そして、もうひとつが、お客さんの中に、勅題菓はもとより『歌会始』そのものを知らない方が増えたことが
理由だそうです。
時代の流れと言ってしまえば、それまでですが、作らなくなったお店には、もう一度、作っていただきたいものです。
また、大変ながらにも今まで作り続けているお店には、これからもずっと作り続けていただきたいと思います。
京都の新年に勅題菓を楽しむ素晴らしい文化を改めて根付かせていただきたいと切に願っています。


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2017年1月18日

菓銘『山路』
緑菴
京都市左京区浄土寺下南田町126-6
(075)751-7126


雪景色となった1月15日の京都市内。
これほどの素晴らしい雪景色を見ることができたのは、私の記憶が間違っていなければ2015年のお正月以来です。
いつにもまして寒さが厳しいにも関わらず京都市内の観光スポットは多くの観光客で溢れていました。
観光客の皆さんは、京都の素晴らしい雪景色を見て一生忘れられない思い出となったのではないでしょうか。

私も素晴らしい雪景色を一目見ようとカメラを片手に京都市内を回りました。
私がどうしても見てみたかったのが雪景色の『法然院』。
静寂を求めて春夏秋冬を問わず、日頃より、早朝によく訪れる寺院です。

耳を澄ましていれば、静寂の中から聞こえてくる自然が創り出す音の数々。
心地の良い水や風の音。
そして鳥や小動物の鳴き声。
静けさというものが、人が生きていく上で如何に大切かを教えてくれる寺院です。

この日は、まるで水墨画のような空間に身を置きながら、静寂の中から聞こえてきた雪の降り積もる音。
今回は、法然院からほど近くのお店が作る、雪にちなんだ意匠のお菓子をご紹介します。
ご紹介させていただくお菓子は、『こなし』の代表的な意匠の一つです。

抽象的な曲線で山並みを感じさせて、その時々の季節に合わせた色を使うことによって四季折々のお菓子に
仕上げています。
春は、よもぎ色と桜色など。
秋は、黄色と朱色など。
夏の暑い時期には、こなしは食べない為に作らないそうです。
仮に作るとしたら緑色と水色といったところでしょうか。

そして、冬は今回のような色合い。
雪を表現した『白』。
土の中から萌え出した草や芽などを表現した『よもぎ色』。

口の中でほんのり香るよもぎの風味。
春が近づいてきたこの時期らしいお菓子です。
土の中では、確実に春へと向かって成長している季節の移ろいを私たちにお菓子は伝えてくれます。
日々の生活に追われてつい忘れがちなことを思い出してみてはいかがでしょうか。


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2017年1月25日

菓銘『梅の雪』
船屋秋月(北野店)
京都市上京区馬喰町898
(075)464-2618


本日1月25日は、北野天満宮で今年になって最初の縁日が行われる日。
『初天神』と呼ばれ、大勢の参拝者で境内が賑わいます。

祭神・菅原道真の誕生日と命日、そして太宰府に左遷された日にちにちなんで毎月25日に開催される『天神さん』。
市では、骨董品や古着などが所狭しと置かれ、掘り出し物を買おうと大勢の人で賑わいます。
天神さんについては、『月刊京都2月号』で触れられていますので本誌を手に取って天神さんに行った気分に
なるのも楽しいと思います。

梅の名所として全国的にも有名な北野天満宮ですが、境内には50種、1500本もの梅の木が植えられいます。
一部の梅の花がほころび、参拝に訪れた方はひと足早い春の訪れの香りを楽しんでいます。
小さなお子さんが、お父さんに抱きかかえられて花の近くまで顔を寄せて「お花の匂いがするっ!」と嬉しそうに
言っている光景。
とても微笑ましく、心温まり、その可愛らしさにこちらまでつい笑顔になります。

今回は、北野天満宮に参拝された方は、必ず目にしているこちらのお店のお菓子をご紹介します。
そのお店は今出川通りから北野天満宮・一の鳥居を見て右手すぐにあります。
北野天満宮にちなんで販売されている『北野梅林』という代表銘菓。
口いっぱいに広がる甘酸っぱさとほんのり香る梅の香りが印象的なお菓子です。

そのお店が今の時期に販売しているお菓子がこちらです。
境内に咲きはじめている寒紅梅に雪が降り積もった情景を表現しているこなし製の『梅の雪』
という銘のお菓子です。
雪に見立てた氷餅が、大寒となりさらに厳しくなった寒さを心地よく感じさせてくれると共に、この寒さの先に
待っている春を感じさせてくれます。

1月28日より北野天満宮の梅苑の公開がいよいよ始まります。
梅苑で、お菓子屋で梅を楽しんでみてはいかがでしょうか。



profile

小倉 夢桜−Yume− (おぐら ゆめ)

京都在住。
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファーとして、四季折々の京都を発信。
手のひらにのせた和菓子から小さな幸せを感じ、『手のひらの幸せ』をより多くの方に伝えたい!
その想いから2012年より、自身が立ち上げた【きょうの『和菓子の玉手箱』】。
こちらでは京都の素敵な和菓子たちの世界を毎日お届けしている。
立ち上げて以来、自身が食べた和菓子の数は数千個に及ぶ。
数々の和菓子を見て、食べて感じた経験を活かして、テレビ番組製作の監修をはじめ、執筆活動や講演など
京都の和菓子をより多くの方に身近に感じていただく活動を行っている。
現在は月刊京都(白川書院)で【月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』】を連載中。


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