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京都和菓子歳時記-2017年3月-・きょうの『和菓子の玉手箱』

和菓子歳時記ー2017年3月ー

和菓子ライフデザイナー小倉夢桜-Yume-が
ご紹介する京都の素敵な和菓子の世界。
新たな京都を感じてみませんか。

ギャラリー

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2017年3月1日

菓銘『雛の宴』
長久堂
京都市北区上賀茂畔勝町97-3
(075)712-4405


昨年の3月1日より始まりました【月刊京都版 きょうの『和菓子の玉手箱』】は、皆様のおかげをもちまして
一年を迎えました。
和菓子職人さんの手仕事から作り出される素敵な京都の和菓子。
その和菓子から京都の四季を感じていただければという思いから続けているこちらの企画です。

春から始まり、夏、秋、冬、そして季節は巡り、また春へ。
過ぎゆく季節に寂しさを感じつつ、迎える季節に胸を躍らせて一年が経ちました。
和菓子から季節の移ろいをより多くの方々と共に感じられることを願って二年目の【月刊京都版 きょうの
『和菓子の玉手箱』】の始まりです。

北野天満宮の梅花祭を終えて、京都ではいよいよ、本格的な春の到来を感じるようになってきました。
一条戻橋のたもとに植えられている早咲きで有名な河津桜の蕾が膨らみ、数輪ですが可憐な花を咲かせています。
2日後の3月3日は五節句のひとつ『上巳の節句』、雛祭りとして親しまれている節句です。
当日は京都各所で京都らしい華やかな年中行事が行われます。

ただ今、向日市を通る西国街道沿いでは、3月5日(日)まで『西国街道ひな人形めぐり』が行われています。
約30軒の旧家や商家などで、江戸から昭和初期にかけての貴重なひな人形が飾られています。

中でも国登録有形文化財に登録されている中小路家住宅では、数多くの雛段飾りや御殿雛、
そしてつるし雛や流し雛などが飾られていて、ひな人形の素晴らしさに触れることができる貴重な機会と
なっています。
是非、機会があれば時間に余裕を持って西国街道をのんびりと散歩しながら、ひな人形めぐりをしてみては
いかがでしょうか。

今回のお菓子は、ひな人形のような素敵な女性の和菓子職人さんが作ったお菓子をご紹介します。
一目見て思わず「可愛い!」と叫んでしまいそうな外郎とこなしで模ったお雛様の意匠。
こちらのお店らしい雰囲気と色づかいのお菓子です。
どのお菓子も店頭で販売するお菓子は、できるだけ初めての方にも分かりやすく親しみがわくような意匠を
心がけているそうです。

今回ご紹介する、こちらのお菓子が生まれたのは約五年前。
大正生まれのお店の工場長さんだった方が考案されたお菓子だそうです。
その工場長さんから受け継ぎ、日々、さまざまな方からいただく意見は勉強になると共に励みにもなるという
女性の職人さん。
お菓子のことについて語られている時の生き生きとした目と笑顔がとても印象的でした。
これからも素晴らしいお菓子を私たちに提供してくれることをとても楽しみにしています。
こちらのお菓子でひな祭りをすれば、笑顔が絶えない節句となること間違いなしですね。


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2017年3月8日

菓銘『桃の花』
幸楽屋
京都市北区鞍馬口通烏丸東入ル新御霊口町285-59
(075)231-3416


二十四節気・雨水(うすい)から啓蟄(けいちつ)となり、一雨ごとに暖かくなっていくこの時期。
冬ごもりをしていた虫たちもこの暖かさに誘われて穴から姿を見せてくれることでしょう。
七十二候では、今週末3月10日に『桃始笑(ももはじめてさく)』となります。

京都市内で桃の名所といえば、まず真っ先に挙げられるのが京都御苑ではないでしょうか。
烏丸通りから蛤御門をくぐって間もなく右手に桃の木が約70本植えられている桃林が広がっています。
花屋では、綺麗に花が咲いている桃を見かけますが、こちら桃林に植えられている桃は、まだ蕾がようやく
大きく膨らんできたところで開花までは、あともう少しかかりそうです。
例年3月の中旬ごろより咲き始め、桜と共に4月の初旬いっぱいまで楽しむことができます。

その桃ですが、歴史は古く弥生時代に中国から日本に渡ってきたそうです。
中国では、桃は魔除けや不老長寿の実とされていました。
日本でも魔除けの力があるとされ、鬼門に桃の木を植えたり、桃をモチーフにした瓦を使用している様子を
見かけることがあります。
そして、桃といえば日本昔話でもお馴染みの桃太郎。
ピンときた方は、もうお分かりだと思いますが、桃太郎が鬼退治をする物語も一説によればそこからきていると
言われています。

今回は、その桃にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
京都御苑の北西角近くにある地下鉄・今出川駅の隣駅となる鞍馬口駅から徒歩5分。
こちらのお店は、夏場に販売される錦玉製の『金魚鉢』という涼し気なお菓子が有名ですが、その他のお菓子も
とても印象的です。
桃の花を模った外郎で作られたお菓子からは、本物にも負けないくらい神秘的な雰囲気を感じとることができます。
暖かくなった日には、京都御苑の桃や桜の下でお菓子を食べながらのんびりと過ごすひと時がおススメです。
家族連れで、カップルで、友達同士でいかがでしょうか。

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2017年3月15日

菓銘『嵯峨桜』
米満軒
京都市右京区嵯峨釈迦堂大門町28
(075)861-0803


花の便りが届くようになり、本格的な春の訪れにまた一歩近づいてきました。
嵐山渡月橋から一路北へ。
左手に天龍寺、竹林の道への入り口を見てJR嵯峨野線を越えるとその先には、歴史を感じる大きな仁王門が
見えてきます。
江戸時代に建てられた清凉寺の仁王門です。
その仁王門をくぐると広い境内には大きなご本堂が建ち、その左手奥には美しい山々を見ることができます。

素晴らしい景色と開放感に両手を上げて深呼吸。
色々なことを忘れて心機一転できてしまう寺院です。
現在、境内に植えられている梅の花が見ごろを過ぎ、その代わりに早咲きの河津桜が咲き始めてきました。
いよいよ本格的な春の到来です。

本日3月15日は、こちら清凉寺で『お松明式』と『嵯峨大念仏狂言』が行われます。
『お松明式』は、京都の春を告げる行事として『五山送り火』と『鞍馬の火祭』とともに京都三大火祭と
されています。
境内に組まれた3本の約7mの松明に火を投じて、松明の燃え盛る火の勢いで今年の農作物の豊凶を占います。
夜空を赤く染める火の勢いと空に巻き上がる火の粉。
瞬く間に松明が燃え尽きる光景は圧巻そのものです。

また、『嵯峨大念仏狂言』も壬生寺、千本ゑんま堂とともに京の三大念仏狂言とされています。
毎年、境内の狂言堂で行われますが、今年は狂言堂の改修工事の為、ご本堂で行われます。
今年の演目は、 『釈迦如来』、『橋弁慶』、『土蜘蛛』が予定されているそうです。
『嵯峨大念仏狂言』は15時30分から、また、『お松明式』は20時からそれぞれ始まる予定になっております。
お時間の許す方は、ぜひ出がけてみてはいかがでしょうか。

今回のお菓子は、その清凉寺の門前にあります和菓子屋さんのお菓子をご紹介させていただきます。
こし餡が入ったお饅頭に塩漬けされた桜の花をあしらった可愛らしいお菓子です。
ほのかに香る桜の香りから、春を感じ、つい笑顔になります。
清凉寺へお出かけの際には、ぜひお土産としてみなさんに春のお裾分けをしてみてはいかがでしょうか。

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2017年3月22日

菓銘『疏水の桜』
亀屋
京都市山科区四ノ宮堂ノ後町17
(075)581-0016


窓越しに射し込む朝陽で目が覚めて一日が始まる午前6時過ぎ。
その優しい陽射しから春を感じます。
朝の散歩道。
肌寒い気温の中、朝の陽射しを浴びながら過ごすひと時がとても心地よく、これから迎える桜シーズンに期待が
高まり胸が膨らみます。
京都には多くの散歩道があります。

ただ今、書店にて販売されている月刊京都・4月号の特集は、『桜名所を歩こう』です。
その本誌で紹介されている鴨川、哲学の道や山科疏水などの『桜の道』。
のんびりと歩きながら桜が演出してくれる素晴らしい風景を見ることができるお気に入りの道ばかり。

その中でも、菜の花と桜が競演して春らしい風景を見ることができる山科疏水は私のオススメです。
京阪四ノ宮駅または、山科駅から徒歩10分ほどで山科疏水に着きます。
そこから日ノ岡まで約4キロ続く疏水沿いには、山桜、ソメイヨシノをはじめとする四季折々の草花が咲き、
市民の散歩道として親しまれています。
その中でも毘沙門堂の参道『毘沙門道』と疏水が交差する安朱橋付近の東側疏水沿いには、地元住民の手によって
菜の花が植えられています。
これからの時期、桜の淡い薄紅色と菜の花の鮮やかな黄色のコントラストが疏水沿いに彩りを添えます。
現在のところ、菜の花はわずかに咲き始めたところで、桜の蕾はまだ硬く、開花まではまだ時間がかかりそうです。

今回は、まだ咲かぬ疏水の桜に想いを馳せて、京阪四ノ宮駅前通りにお店を構えているお菓子屋さんのお菓子を
ご紹介させていただきます。
お菓子屋さんで様々な桜をモチーフにした意匠のお菓子を見かけるようになってきました。
こちらのお菓子もその中の一つです。
降り注ぐ、やわらかい春の陽射しを浴びて咲いている桜のように感じる優しい色合いのお菓子。
『ぼかし』という手法で薄紅色の練りきりと白色の練りきりが織りなす日本らしい美意識を感じることができます。
桜が見ごろとなる頃はもちろんのことですが、桜の蕾が大きく膨らむこれからの時期、一足早く桜を感じてみては
いかがでしょうか。



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2017年3月29日

菓銘『花くれない』
源水
京都市中京区油小路通二条下ル
(075)211-0379


鴨川沿いや祇園白川沿いに植えられている柳が芽吹きはじめています。
春の日差しを浴びて川面がキラキラと輝く光景を背景に芽吹いたばかりの柳の葉が心地よい風になびく春らしい風景
を目にするようになってきました。

川沿いに植えられている柳は、見慣れた風景ですが、その理由は、柳は湿気を好み、根が丈夫で深く根付くから
だそうです。
そのことから昔は、川岸に植えて水害によって川岸が崩れることを未然に防いでいたそうです。
今では土木工事の技術が進み、柳に頼る必要もなくなってきたのかもしれませんが、先人たちの知恵は本当に
素晴らしいものです。

景観だけでなく、人々の暮らしを守ってきた柳、そして桜を題材にしたきんとん製のお菓子を今回は、ご紹介
させていただきます。
一月から二月にかけて、紅白梅の花を表現した『此花(このはな)』や『咲き分け』という銘が付いた紅白の
きんとん製の初春を代表するお菓子があります。
季節が移ろい、今の京都市内のお菓子屋さんでは、芽吹いた柳を表現した緑色と桜の花を表現した桜色を
色分けしたきんとん製のお菓子を見かけます。
素性法師が詠んだ【見渡せば 柳桜を こきまぜて みやこぞ春の 錦なりける (古今和歌集)】が題材と
なったお菓子です。
一般的には『都の春』という銘が付けられます。

そして、もう一つ。
中国の詩人・蘇軾 (そしょく)が詠んだ【柳緑花紅真面目(やなぎはみどり はなはくれない しんめんもく)】
という詩があります。
日本では、『柳緑花紅(りゅうりょくかこう)』という四字熟語となり、人の手を加えていない自然のままの美しさや
春の美しい景色の形容として使われています。
そこから付けられた銘のお菓子です。
京都の春を感じながら召し上がっていただきたい、京都の春に欠かすことができないお菓子です。


profile

小倉 夢桜-Yume- (おぐら ゆめ)

京都在住。
和菓子ライフデザイナー/ライター/フォトグラファーとして、四季折々の京都を発信。
手のひらにのせた和菓子から小さな幸せを感じ、『手のひらの幸せ』をより多くの方に伝えたい!
その想いから2012年より、自身が立ち上げた【きょうの『和菓子の玉手箱』】。
こちらでは京都の素敵な和菓子たちの世界を毎日お届けしている。
立ち上げて以来、自身が食べた和菓子の数は数千個に及ぶ。
数々の和菓子を見て、食べて感じた経験を活かして、テレビ番組製作の監修をはじめ、執筆活動や講演など
京都の和菓子をより多くの方に身近に感じていただく活動を行っている。
現在は月刊京都(白川書院)で【月刊京都版・きょうの『和菓子の玉手箱』】を連載中。


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