月刊京都連載 和菓子歳時記
2016
32

ひちぎり

京都市内の和菓子屋では『下萌え』や『早わらび』などと名付けられた季節の移ろいを感じる菓銘の上生菓子が店頭
に並んでいます。
そして、各所で雛人形が飾られている様子を目にするようになってきました。
3月3日は、雛祭りとして親しまれている『上巳の節句』。別名『桃の節句』とも呼ばれ、
暖かな春の訪れを感じる行事です。
京都では、旧暦にならい、一ヶ月遅れて4月3日に行なわれるご家庭が多くあります。

その頃は桃の花が咲く頃。
そこから『桃の節句』と呼ばれるようになりました。
この時期に見かける『ひちぎり』は京都で作られる雛祭りの代表的な上生菓子です。
もとは平安時代、宮中の儀式の祝儀に用いられた『戴き餅』に由来します。白いお餅を引きちぎって、
真ん中を窪ませて、その上に餡を載せただけのものでした。

その『戴き餅』が、時代を経て江戸時代に現在のような意匠となりました。
華やいだ桃の節句にふさわしいお菓子です。
菓銘ひちぎり
店名聚洸
住所京都市上京区大宮寺之内上ル
電話(075)431-2800
2016
39

さくら餅

東寺や一条戻り橋では早咲きの桜である河津桜(カワヅザクラ)の開花が始まり、
通り過ぎる人々を楽しませています。
河津桜は大島桜(オオシマザクラ)と寒緋桜(カンヒザクラ)との自然交雑種であるといわれています。
そのひとつ大島桜の葉は塩漬けすることで特徴的な芳香を放ちます。
春の代表的な和菓子のひとつである『さくら餅』。

桜葉のいい香りがとても印象的なお菓子ですが、多くのお店では、その大島桜の葉を桜餅に使用しているそうです。
京都でよく見かける桜餅は餡を薄い桜色に染めた道明寺餅で包み、桜葉で巻いたものです。
私にとっては、春になると家族で食卓を囲み食べた、幼い頃から慣れ親しんできたお菓子です。
いつしか『春の香り』は桜餅を口に入れた時の香りだと思うようになっていました。
みなさまも、存分に春の香りをご堪能ください。
菓銘さくら餅
店名いけだ
住所京都市北区紫竹高縄町70-13
電話(075)495-9170
2016
316

ふくらみ

2016年・桜シーズンが目前となり、色々なところで桜の話題を耳にする時期となってきました。
桜の陰でひっそりと咲く桃の花。
桃を題材にした和菓子の意匠は、桜の意匠に比べると数少なく、あまり見かけることがありません。
とある和菓子屋のご主人によれば、やはり桃の意匠よりも桜の意匠の方が、圧倒的に人気がある為、
このようなことにならざるを得ないそうです。

今回、ご紹介させていただくお菓子は、その『桃』の意匠。しかも、桃の花の蕾をイメージした珍しい意匠の
『こなし』製のお菓子です。
今まで数々のお菓子を見てきましたが、このような意匠は初めてみました。
桃の花の色をピンクと表現されることがありますが、英語の【Pink】はナデシコを指し、正確には、桃の花の色を
『桃染(ももぞめ)』と表現します。
日本書紀にも『桃染布五十八端』と記されているように古来より使われてきた色です。
ほころびかけた蕾。『若緑』と『桃染』のグラデーションで時が流れているように感じる、趣きのあるお菓子です。
菓銘ふくらみ
店名笹屋春信
住所京都市西京区桂乾町66-1
電話(075)391-4607
2016
323

桜だより

平野神社・楼門の傍らに植えられている枝垂れ桜『魁(さきがけ)』の開花が始まりました。
いよいよ京都の本格的な桜シーズンの到来を告げる桜の開花です。

こちらの桜は平野神社発祥の一重の枝垂れ桜。
楼門よりも大きな魁桜は、まるで楼門を包み込むかのように優雅に咲き、訪れる参拝者を魅了します。
京都には数多くの美しい桜がありますが、魁桜も毎年必ず見たい桜のひとつです。
京都市内では、4月下旬に咲く遅咲きの里桜まで約1ヶ月間、桜を楽しむことができます。

近頃、和菓子屋の店頭には多くの華やかな桜の意匠のお菓子を見かけるようになってきました。
今回は桜の焼印とピンク色のぼかしが可愛らしい薯蕷(じょうよ)製のお菓子です。
次から次へと様々な品種の桜が咲く、これからの時期にぴったりの菓銘のお菓子です。
菓銘桜だより
店名日栄軒
住所京都市北区小山初音町61
電話(075)491-2204
2016
330

さくらきんとん

京都では桜の開花宣言が出て、いよいよ本格的な桜シーズンを迎えようとしています。
(一部の桜は見頃もしくは散り始めている桜もあります。)

この時期になると、よく観光客に尋ねられるのが、「何処の桜が一番綺麗ですか?」という質問です。
何処の桜も風情があり、これほど答えに悩む質問はありません。
毎年、京都の数多くの桜を見て、知れば知るほど、簡単には答えることができなくなってきています。
私の桜の愛で方は、その年毎にお気に入りの桜を決めて、蕾みがほころぶ頃から散り桜となるまでを見届けます。
不思議と同じ桜なのに、日々違う表情を見せてくれます。

今、私は近衛邸跡の糸桜を目の前にこの記事を書いています。
もちろん、和菓子も一緒に!
今回のお菓子は、咲き始め間もない花をピンク色。
ひらり…ひらり…と散りゆく、ひとひらの花びらを白色で表現しています。
一本桜の時の流れを感じることができるお菓子です。
菓銘さくらきんとん
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
prev前月 次月next

きょうの和菓子の玉手箱きょうの和菓子の玉手箱

きょうのお菓子

月刊京都連載
和菓子歳時記

スマートフォン、タブレットを縦にしてご覧ください。