月刊京都連載 和菓子歳時記
2017
21

節分

如月となり、様々な寺社の境内で『鬼は外ぉ~福は内ぃ~』と掛け声が聞こえてくる時期となりました。

今年は2月3日が『立春』。
立春の一日前より主要な寺社では、節分祭(節分会)が始まり、2月3日には、多くの寺社で節分祭が執り行われます。

京都では、表鬼門にあたる『吉田神社』、そして、裏鬼門にあたる『壬生寺』が特に有名で多くの参拝者が
訪れますが、その他にも京都の節分祭は多種多様です。
京都で行われる年中行事の中で子供からお年寄りまで楽しめる最も楽しい行事と言っても過言ではないのでは
ないでしょうか。

平安時代の鬼祓い神事を伝える『追儺式(ついなしき)』を行う寺社もあれば、現代的に音楽と光を交えて
鬼祓いをする寺社もあります。
鬼祓いの仕方も寺社により様々。
その違いを見るのも楽しみ方の一つだと思います。

そして、京都らしく、華やかに芸舞妓さんが豆まきを行う八坂神社。
観光客にとっては、華やかな京都を感じるには、またとない機会となることでしょう。

さて、節分の主役である鬼。
鬼の独特の風姿には理由があります。
陰陽五行では鬼の出入りする方角は北東(鬼門)とされています。
北東は丑寅(うしとら)の方角となり、そこから鬼の風姿は、頭には角があり、虎の縞模様のパンツを
履いているようになったと言われています。

また、鬼の色にも理由があり、五蓋(ごがい)からきているそうです。
五蓋とは、仏教における瞑想修行を邪魔する五つの煩悩のことです。
赤鬼は欲深く、青鬼は怒りっぽく、緑鬼は怠け者、黒鬼は疑い深く、黄鬼は甘え者。

今回は、その中から誰もが身近に感じる、よく深い赤鬼を表現したお菓子のご紹介です。
練切りで作られた角がとても可愛らしい、きんとん製のお菓子です。
こちらのお菓子を召し上がって鬼祓いをしてみてはいかがでしょうか。
菓銘節分
店名亀屋光洋
住所京都市左京区一乗寺払殿町17-12
電話(075)711-3764
2017
28

うぐひす

節分が終わり暦の上では春となりました。
明日、2月9日は七十二候では、『黄鴬睍睆(うぐいすなく)』となります。

「ホーホケキョ」と鶯が春の到来を告げるように鳴く頃です。
この時期、多くの和菓子屋では、『うぐいす餅』が販売されています。
京都の1月の代表的な和菓子が『花びら餅』であり、2月の代表的な和菓子が『うぐいす餅』です。

今回は、その『うぐいす餅』のご紹介です。
うぐいす餅は一般的には、求肥で餡を包み左右に引っ張り、端を少しすぼめて鶯の形にして、
鶯の羽色に似せる為に、青大豆きな粉をまぶしたものです。

この私たちに馴染みのある『うぐいす餅』の名付け親は京都に縁の深いあの人物です。
天正年間(1580年代)、奈良の大和郡山にあった郡山城の城主・豊臣秀長が兄の秀吉を招いて茶会を開きました。
その茶会に献上されたのが、現在のうぐいす餅のような形だったそうです。
そのお菓子を大変気に入った秀吉は、形が鶯に似ていることから『うぐいす餅』と名付けたそうです。
このような身近なお菓子の名付け親が秀吉だったとは意外ですね。

その秀吉が栄華を極めた御殿『聚楽第』。
その一文字が店名に入っているこちらの店で二月下旬まで販売されている『うぐいす餅』には、
『うぐひす』という銘が付けられています。

一般的な求肥ではなく、外郎生地で作られています。
そして、今回のお菓子は、その外郎生地ではなく、味噌餡を包んだ羽二重製の『うぐいす餅』を特別に作っていただきました。

いずれのお菓子も春告鳥の異名をもつ鶯のように、春を感じることができます。
菓銘うぐひす
店名聚洸
住所京都市上京区大宮寺之内上ル
電話(075)431-2800
2017
215

つばき餅

2月も半ばとなり、城南宮のしだれ梅の開花が始まってきました。
2月18日からは、毎年恒例の『しだれ梅と椿まつり』が始まります。

神苑入口を入って直ぐに広がる『春の山』と名付けられているエリアに植えられている150本ものしだれ梅。
近年は、この時期になると、平日、休日を問わずに大勢の参拝者が訪れる人気観光スポットになってきました。
満開の時期には、香しく咲く梅の甘い香りが周辺に立ち込めて、訪れる人々からは感嘆の声が上がります。
今年も、きっと大勢の人々を楽しませてくれることでしょう。

そして、こちらの庭園には、25品種以上、約300本もの椿が植えられています。
訪れる人々のほとんどがしだれ梅を目当にしてお越しになられますが、椿の花も多くの品種がしだれ梅と共に
見頃を迎えますので楽しんでいただけることだと思います。
華やかに咲いているしだれ梅とは対照的に控えめに咲いている椿。

その椿にちなんだお菓子を今回はご紹介させていただきます。
植物の葉で包んだお菓子といえば、真っ先に思い出されるのが、桜餅、かしわ餅ではないでしょうか。
椿餅を思い出される方は茶道の経験がある方なのかもしれません。
一般的には、あまり馴染みのないお菓子かもしれませんが、『椿餅』は日本最古の餅菓子といわれています。
源氏物語『第34帖・若菜上』の中で、
『椿い餅、梨、柑子やうのものども、様々に筥の蓋どもにとりまぜつつあるを、若きひとびと、そぼれとり食ふ』
と若い人々が蹴鞠のあとの宴で食べる場面が登場します。
その当時には砂糖は無く、甘葛(あまづら)というツタの汁を煮詰めたものでほんのりと甘味をつけていたようです。

艶やかな厚手の葉が特徴的な椿。
その椿の名の由来は、『厚葉木(あつばき)』または『艶葉木(つやばき)』からきたとされています。
名の由来にもなった葉を使ったお菓子は、葉を愛でるお菓子でもあります。
この機会にじっくりと葉を愛でてみると咲いている椿の花が少し違うように感じるかもしれませんね。
菓銘つばき餅
店名船屋秋月
住所京都市右京区宇多野福王子町13-3
電話(075)463-2624
2017
222

北野の春

梅の香しい匂いに春を感じ、お世辞にも上手いとは言えない音程を外した鶯の鳴き声が何処からともなく
聞こえてくる京都の2月。
北野天満宮では、祭神の菅原道真の命日である2月25日に梅を愛した道真を偲んで『梅花祭』が行われます。

現在、境内に植えられている多くの梅がほころび、梅花祭が行われる当日には、梅の甘い香りが立ち込めている中で
上七軒の芸舞妓さん達の奉仕による華やかな野点が行われることになりそうです。
近年、境内の整備が進められており、紅梅殿前の庭園、御手洗川が昨年の夏に完成して初めて迎える梅花祭です。
今年はどのような梅花祭になるのかが今から楽しみです。

今回は、その北野天満宮から東へ徒歩15分ほどのところで店を構えているお菓子屋さんのお菓子をご紹介させて
いただきます。
紅白梅をイメージした色合いのこなしに入っている牛と梅の模様。
春の気配を感じるお菓子です。
わかる方は、説明がなくても、その意匠を見るだけで北野天満宮を想像してしまうのではないでしょうか。
お菓子本来の楽しみ方を感じる素敵なお菓子です。
北野天満宮へ参拝に行かれた際には、散策がてら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
菓銘北野の春
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
prev前月 次月next

きょうの和菓子の玉手箱きょうの和菓子の玉手箱

きょうのお菓子

月刊京都連載
和菓子歳時記

スマートフォン、タブレットを縦にしてご覧ください。