月刊京都連載 和菓子歳時記
2017
45

『初花』『桜流し』『春かすみ』『花の宴』『花筏』『夜桜』『ひとひら』

先週、待ちに待った桜の開花宣言が出された京都市内。
昨年より8日遅い開花宣言となりました。
昨年の今頃は、京都御苑・近衛邸跡の糸桜や平野神社の魁桜などの早咲きの桜は見頃を終えていましたが、
今年は見頃を迎え大勢の花見客で賑わっています。
これからはソメイヨシノ、八重紅枝垂れ桜、そして里桜などが順番に咲き、4月末くらいまで桜を楽しめる
日々がしばらく続きます。

桜にまつわる言葉をみなさんはどれくらいご存知でしょうか。
桜月、桜雨、桜人、花筏、ひとひら、桜雲などなど。
いずれも響きがとても綺麗で知れば知るほど言葉のもっている美しさ、楽しさを感じる事ができます。
今回は、本格的な桜シーズンを目前に桜を感じられる素敵なお菓子たちをご紹介させていただきます。
まずは、以下に挙げる言葉が写真に写っているお菓子の名前です。
『初花』、『桜流し』、『春かすみ』、『花の宴』、『花筏』、『夜桜』、『ひとひら』の計七つです。

さて、問題です。
どのお菓子がどの名前でしょうか。
言葉のもっている意味を考えてみるとそんなに難しくはないと思いますので挑戦してみてくださいね。

『初花』は、その季節に初めて咲く花を意味します。
華やかさではなく、ひっそりと人知れずに咲いている雰囲気を感じるお菓子です。

『桜流し』は、雨で桜の花びらが散り、流されていく様子を意味します。
花びらが流れていくとともに季節の流れも感じられるお菓子です。

『春かすみ』は、春に霞によって山々などの遠くの景色が見えにくくなることを意味します。
ぼんやりとした春らしい、やわらかさを感じるお菓子です。

『花の宴』は、桜の花を鑑賞しながら催す宴を意味します。
華やかな宴を想像してしまう華やかさを感じるお菓子です。

『花筏』は、水面に散った花びらが吹き寄せられて流れていく様子を意味します。
水面が桜色に染まり、散ってなお美しい情景が表現されているお菓子です。

『夜桜』は、夜の花見を意味します。
闇夜に溶け込んだ桜を月光が照らしている情景はまさに神秘的。
もう、どのお菓子かおわかりですね。

『ひとひら』は、花びらのことを意味します。
私が大好きな言葉の一つです。
ひとひらを漢字では『一片』と書きますが、やはり平仮名の柔らかい雰囲気がぴったりと合う言葉です。
平仮名の柔らかさ、しなやかさのような雰囲気を感じるお菓子です。

正解は、『初花』が一番手前にある白い羽二重製のお菓子です。
そこから時計回りに『桜流し』、『春かすみ』、『花の宴』、『花筏』、『夜桜』と並び、そして真ん中に
『ひとひら』のお菓子です。
さて、みなさんはいくつ正解できたでしょうか。
桜の下で様々なお菓子を持ち寄ってヒントを出して、想像を膨らませて菓銘を当てあいながらひと時を
過ごすなんていかがでしょうか。
菓銘『初花』『桜流し』『春かすみ』『花の宴』『花筏』『夜桜』『ひとひら』
店名聚洸
住所京都市上京区大宮寺之内上ル
電話(075)431-2800
2017
412

ひとしらべ

本格的な桜シーズンをようやく迎えた先週の京都。
しかしながら、雨の週末となりました。
一部では花筏や桜吹雪となっているところもあります。

これからは遅咲きの桜が咲き、もみじが芽吹き、より一層、春らしい色が街の至るところに溢れ、華やいだ雰囲気と
なることでしょう。
ニュースでは、毎日のように京都の桜風景がテレビに映し出され、幻想的な風景に誘われるかのように知らず知らず
のうちに早起きをして桜を求めて出かける日々です。

ニュースで知ったのですが、ここ数年、桜シーズンには紅葉シーズンを超える人数の観光客が京都に来ている
そうです。
そのことを意外に感じたのは私だけでしょうか。
今は、華やいだ京都が人気なんですね。

華やいだ京都といえば、4月1日より始まっている祇園に春を告げる『都をどり』。
毎年、舞妓さんをモデルにした春らしい素敵な日本画を使用したポスターが祇園界隈に貼られ、訪れた人々は
そのポスターから春を感じます。
今年のポスターには、凛とした表情で鼓を打っている舞妓さんの様子が描かれています。

今回は、そのポスターにちなんで鼓の意匠のお菓子をご紹介します。
この時期らしい桜色の生地に鼓の皮の焼印を施した薯蕷饅頭。
そこに締めたり緩めたりすることで音色を変える朱色の調緒(しらべお)を飾っています。
調緒(しらべお)のことを『調べ』とも呼びますが、そこから付けられた菓銘『ひとしらべ』です。
見ているだけで幸せになれそうなお菓子。
こちらのお菓子から春の音色を感じてみてはいかがでしょうか。
菓銘ひとしらべ
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2017
419

花筏

川端康成の小説『古都』の中に出てくる「御室の桜も一目見たら、春の義理が済んだようなものや」という台詞。
先週末に仁和寺の御室桜が満開を迎えました。
桜雲越しに見える五重塔。
京都の桜シーズンのフィナーレを飾るに相応しい光景です。

桜の名所を訪れてみると、数週間前の賑わいが嘘のような静けさ。
花の美しさだけではなく、散りゆく姿も美しい桜。
散りゆく姿を存分に楽しめる時期です。

今回は、桜が散るこの時期によく耳にする『花筏』が菓銘となっているお菓子のご紹介です。
花筏とは、桜の花びらが水に浮かんで流れて行く様子のことです。
ひらひらと水面に舞い落ちる花びら。
そして、花びらは水の流れにまかせて筏のように。
水面と桜をイメージした色合いのこなしに花びらの型押し。
みなさんは、どのような情景を思い描くことでしょうか。
菓銘花筏
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
2017
426

山吹

京都市内を移動していると芽吹いたばかりの木々の鮮やかな若葉色が目に飛び込んでくるようになってきました。
この時期、木々たちが見せてくれる優しい表情に癒され、ついつい時間を忘れて心ゆくまで静かに過ごして
しまいます。
新緑の季節の到来です。
これからは、そよ風に吹かれ、木漏れ日を浴びながら気持ちよく過ごせる日々がやってきます。

そして、数多くの花たちが咲き、私たちの目を楽しませてくれます。
先日23日に晴天の下、神幸祭が執り行われた松尾大社では、山吹の花が見頃を迎えています。
山吹は、昨年もこちらでご紹介をさせていただきましたが、やはりこの時期に欠かせない花です。
現在、松尾大社では、楼門の改修工事が行われている為、一部では例年のような幻想的な光景を見ることができない
場所もありますが、約3000株もの山吹が花を咲かせて境内を埋め尽くす光景は、やはり圧巻のひと言につきます。

今回のお菓子は、山吹をモチーフにしたお菓子のご紹介です。
よもぎが入った求肥を葉に、いら粉を花に見立てたお菓子です。
見る方によって、思い思いの山吹が想像できるように抽象的な意匠に仕上げられてる晩春の京都を感じる
お菓子です。
菓銘山吹
店名亀屋重久
住所京都市右京区谷口梅津間町
電話(075)461-7365
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