月刊京都連載 和菓子歳時記
2017
67

蛍の宮

紫陽花が街を彩る季節がやってきました。
京都市内では、少しずつ紫陽花の花が咲きはじめていますが、見頃はまだ少し先になりそうです。
これからは雨の季節に入りますが、雨に濡れた紫陽花を今年も存分に楽しみたいと思います。

ただ今、京都市内の疎水などの水辺では、夜になると蛍が優しい光を灯しています。
近年、地元住民の方々の努力のおかげで街中では気軽に蛍を楽しむことができるようになってきたエリアもあり、
蛍の光がより一層身近に感じられるようになってきました。

観光客に絶大な人気がある祇園白川。新橋通と白川南通の合流点近く、白川にかかる祇園巽橋からも蛍の灯りを
楽しむことが出来ます。
しかしながらお酒を飲む多くの方は、蛍の灯りに気づくことなくお店のネオンの灯りに誘われていきます。
お酒を飲まない私は、祇園巽橋に佇み、蛍の優しい灯りを見ながらそよ吹く夜風にあたりながら時を過ごします。

蛍の優しい灯りは、和菓子から感じる優しさと似ているように感じます。
今回のお菓子は、蛍にちなんだお菓子のご紹介です。
職人さんによりますと、こなしで表現した蛍を外郎でぼんやりと透かして情緒を出すように作られたそうです。

『蛍の宮』の菓銘は、源氏物語に登場する人物より名付けられました。
まさに『手のひらの幸せ』そのもののようなお菓子ですね。
幸せを感じることが出来るお菓子をみなさんもいかがでしょうか。
菓銘蛍の宮
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2017
614

紫陽花

雨音の調べを聴きながら心地よく庭園を眺めることができる季節がやってきました。
先日、全国的に梅雨入りの発表がありましたが、京都市内では雨が少なく、本格的な梅雨空が待ち遠しく思える
くらいの天候が続いています。

京都市内を歩いていると道路傍に植えられている紫陽花の花が色とりどりに咲いている様子を見かけます。
その紫陽花たちも本格的な梅雨空を心待ちにしているのではないでしょうか。

今回は、この時期、多くのお店で見かける紫陽花をモチーフにしたお菓子をご紹介します。ご紹介させていただく
お店からほど近くにあります『辻児童公園』には、公園を取り囲むように様々な種類の紫陽花が植えられています。
職人さんによると今回のお菓子は、その公園に咲いている紫陽花を見て意匠を考えたそうです。

紫陽花には、やはり雨粒がとても似合います。

水を表現する手法の一つに錦玉羹の使用が挙げられます。
今回のお菓子は、さいの目に切った錦玉羹で餡を包み紫陽花を表現しています。
雨にしっとりと濡れた紫陽花が目に浮かんでくるこの時期ならではのお菓子です。
菓銘紫陽花
店名亀屋光洋
住所京都市左京区一乗寺払殿町17-12
電話(075)711-3764
2017
621

半夏生

色とりどりの紫陽花が街を彩る六月。
何処を訪れても可憐な紫陽花が出迎えてくれます。
六月も終盤へさしかかってきました。

紅枝垂れ桜の花で本格的な春の訪れを感じた四月。
躑躅の花が新緑の紅葉と競演した五月。
洛北岩倉にある妙満寺は四季の移ろいを感じることができる寺院です。
これからの時期、山門前の池の水面には睡蓮の花が咲き、緋鯉が睡蓮の花の周りを気持ちよさそうに泳ぐ光景を見る
ことができます。

そして、池の周囲ですくすくと育っている半夏生の葉。
爽やかな緑色の葉が少しずつ白くなってきました。
初夏になると、化粧をしたように白くなり、また緑色の葉に戻ります。
その様子から半化粧と呼ばれ、転じて半夏生となりました。
あと一週間もすれば、緑と白のコントラストが池を演出することでしょう。

今回は、半夏生をモチーフにしたお菓子をご紹介します。
京都では初夏を代表する馴染みのある草花ですが、半夏生にちなんだお菓子は、紫陽花のようにどこのお店でも販売
しているわけではなく、探すのに一苦労するお菓子です。

そのようなお菓子とこちらのお店で出会うことができます。
職人さんによると、緑色の葉が一部を残して真っ白になった半夏生は、とても美しく、その葉が再び緑色に戻る
様子は、とても儚さを感じるそうです。
緑色と白色の外郎(うるじ)生地のぼかしで表現した半夏生。
手のひらに乗せて愛でていると、夏の光景が目に浮かんできます。
お菓子から感じる涼感を皆さんも感じてみてください。
菓銘半夏生
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2017
628

水無月

一年の半分が過ぎようとしている京都市内では、各神社で茅の輪を見かけるようになってきました。
6月30日は、京都で暮らす人々にとっては元旦の次に欠かせない特別な一日。
この半年の罪のけがれを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事『夏越祓(なごしのはらえ)』が各神社で行われ
ます。
神社境内に飾られた茅(ちがや)を束ねて作られた大きな輪を『水無月の夏越しの祓する人はちとせの命のぶと
いうなり』と唱えながらくぐる『茅の輪くぐり』を行います。

茅の輪をくぐり抜けると、夏の疫病や災厄から免れるといわれています。
その『夏越祓』にいただくのが『水無月』という和菓子です。

京都の小学校では、給食に水無月が出てきたり、水無月作りを体験したり、小さい頃より水無月と関わりを持つ
教育が行われているそうです。
京都で暮らす人々にとって水無月は特別なお菓子であることがうかがえます。
そのような想いを持っている人々に提供する和菓子屋さんも特別な想いを持って水無月を作るのは必然なのかも
しれません。

京都御苑南西角からほど近くに店を構えるこちらのお店。
松露と呼ばれる餡にすり蜜をかけたお菓子が有名なお店です。
そのお店が6月28日から6月30日まで販売される水無月は、外観からもお味からもお店のこだわりを感じることが
できる素晴らしいお菓子です。
よく見かける水無月に比べて薄く、大きく三角に作られた外郎生地の上には、まるで宝石を敷き詰めたかのような
輝きを見せる大納言小豆。
より小豆の食感を大切にしたいお店の想いが感じられる外郎生地の厚みです。
その小豆は、すり蜜をかける松露で使用する時と同様に甘さ控えめ。
そして、外郎生地には、吉野産の本葛が使用され何とも言えない葛らしい爽やかな歯切れの良い食感に仕上げられ
ています。
その爽やかな歯切れの良さから涼感を感じ、水無月が本来持っている意味そのものを感じることができます。
皆さんも、涼感のある水無月を召し上がって暑気払いをして、まずは暑い夏を無事にお過ごしくださいね。
菓銘水無月
店名亀屋友永
住所京都市中京区新町通丸太町下ル大炊町192
電話(075)231-0282
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