月刊京都連載 和菓子歳時記
2017
82

すいか

夏本番。
京都市街地では、盆地特有の蒸し暑い日々が続いています。
はじめて、夏の京都を訪れた方は、この蒸し暑さに驚かれているのではないでしょうか。
これほどまでに暑い日々が続くと、つい水が恋しくなります。

鴨川の上流では、子どもたちが楽しそうに飛び石を渡ったり、網を持って魚を採ったりしている姿を見かける時期と
なりました。
夏休み真っ只中なんですね。

そして、この時期の水といえばやはり海。
今までは、京都市街地に暮らしていると海はとても遠い存在でした。
高速道路が天橋立方面まで開通した近年は、アクセスも良くなり、海が身近になりました。
京都で海といえば真っ先に連想するのは、やはり日本三景の一つ『天橋立』ではないでしょうか。
現在、その天橋立では『天橋立まち灯り』と題して8月31日まで、天橋立の砂浜でライトアップが行われています。
闇夜に浮かぶ天橋立の砂浜は幻想的な光景そのものです。
京都市内にはないスケールの大きさを感じることができるライトアップを海水浴帰りに楽しんでみてはいかがで
しょうか。

海水浴で馴染みのあるお野菜に西瓜割りに使用される西瓜がありますが、その西瓜の原産は、意外にも熱帯アフリカ
のサバンナや砂漠地帯だそうです。
西瓜が日本に伝わってきた時代は諸説ありますが、南禅寺の僧・義堂周信の『空華日用工夫集』に西瓜の詩が詠まれ
ていることから室町時代には存在していたのではないかとも考えられています。
90%が水分であるため水分補給にはうってつけの野菜です。
その水分には様々な栄養素が含まれていて、この時期は夏バテや熱中症の予防として摂取するといいそうです。
やはり旬の食材を食べることは理にかなっていますね。

今回は西瓜をモチーフにした外郎製のお菓子のご紹介です。
西瓜の種に見立てた黒ごま。
まるで本当の西瓜のような雰囲気。
見ているだけで涼し気な気分になるから不思議です。
これから海や川など水辺でのレジャーで休暇を過ごされる方は、くれぐれも事故のないようにお気をつけくだ
さいね。
菓銘すいか
店名松彌
住所京都市中京区新烏丸通二条上ル橘柳町161-2
電話(075)231-2743
2017
89

京の朝

立秋を過ぎ、暑い中にも小さな秋の気配を感じることができる時期となりました。
日中は暑く、秋という言葉にはあまり実感が湧かない方も多いと思います。
しかし、二十四節気の立秋の頃に統計的な平均気温は下がりはじめ冬へと向かうそうです。

私たちには、分からない微妙な気温の変化を感じとって秋の音を奏でてくれる虫たち。
ソロだった演奏会は、デュエットとなり、いつしかシンフォニーへと。

この上ない演奏会に酔いしれた翌朝、京都の路地を抜けていく爽やかな風。
軒先では、秋の代表的な季語である『朝顔』が花を咲かせます。

今回はその朝顔にちなんだお菓子のご紹介です。
秋の代表的な季語であるだけにこの時期は多くの朝顔の花を表現したお菓子を見かけます。
しかし、こちらのお菓子は、これから咲きはじめようとする朝顔のつぼみを外郎で表現しています。

今から迎える素晴らしい一日の始まりを感じることができるお菓子です。
日々、みなさんにも色々なことが身の回りに起こっていると思いますが、こちらのお菓子から元気をもらって
みてはいかがでしょうか。
菓銘京の朝
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2017
816

灯籠流し

ご先祖様を身近に感じる『お盆』。
京都では、様々なお寺で灯籠にあかりが灯され、幻想的な厳かな雰囲気となっています。
8月16日はお迎えしたご先祖様が、極楽浄土へと道に迷うことなく帰れるよう送る日。
『五山の送り火』が行われます。

京都市街地の見渡しの良いところからであれば比較的容易に見ることができる送り火ですが、昨年は大雨。
その影響で視界が悪く、例年多くの見物客で賑わう出町柳、鴨川周辺からは見ることが出来ず、がっかりされた方も
多かったのではないでしょうか。

私は、そのような悪天候の中、びしょ濡れになりながら広沢池から嵯峨鳥居本曼陀羅山に浮かぶ『鳥居形』を
見ました。
辺りに夜のとばりが落ちる頃、お経が広沢池周辺に響き亘ります。
灯がともった色とりどりの灯籠が広沢池に流れ浮かび、ご先祖様のご供養が始まりました。
その後、いよいよ鳥居形に火が入り、灯籠と鳥居形が幻想的に闇夜に浮かび上がります。
遠くに燃える鳥居形を見ながら心静かにご先祖様を想いながら京都の夏は終わりを告げます。

今回はその『五山の送り火』にちなんだお菓子のご紹介です。
広沢池に毎年、灯籠を流してご供養をされているご主人。
水の文様が入った外郎を広沢池に見立てて、流れ浮かぶ灯籠と水面に映る『鳥居形』を表現したお菓子です。
過ぎゆく京都の夏をこちらのお菓子から感じてください。
菓銘灯籠流し
店名船屋秋月
住所京都市右京区宇多野福王子町13-3
電話(075)463-2624
2017
823

秋日

夏から秋へ。
五山の送り火を終えた京都市内を散策していると季節の移ろいをより感じられるようになってきました。
日が沈む頃、西の空が徐々に暮れていく光景を眺めながら夏に別れを惜しみ一日が終わります。

「暑い夏、早よ終わらへんかなぁ。」
という皆さんの心の叫びが聞こえてきそうです。
でも暑い夏があるからこそ、暮れていく光景を眺めてこのような惜別の感情を抱くことができるんだと思います。

8月23日より3日間、化野念仏寺の千灯供養に合わせて行われる奥嵯峨の晩夏の風物詩『愛宕古道街道灯し
(あたごふるみちかいどうとぼし)』。
愛宕神社一の鳥居から清凉寺までの街道筋に地元の学生たちが和紙で作った提灯が灯ります。
赤とんぼが飛び交う夕暮れ時から散策をはじめて、ほのかな灯りで照らされた優しい雰囲気へと移り変わる街道
から秋を感じてみてはいかがでしょうか。

今回は夕暮れ時に赤とんぼが飛び交う情景を表現したお菓子のご紹介です。
見ているだけで心穏やかになる優しい色合いと雰囲気。
過ぎ行く夏に別れを惜しみながらいつまでも眺めていたい。
ついそのような気持ちになってしまうお菓子です。
菓銘秋日
店名二條若狭屋
住所京都市中京区二条通小川東入る西大黒町333-2
電話(075)231-0616
2017
830

桔梗

八月も残すところあと僅かとなってきました。
陽射しは暑さを感じますが、日陰に入ると涼しさを感じるようになってきた京都市内です。
本格的な秋の気候はまだまだ先となりそうですが、和菓子屋には秋を感じる多くのお菓子が並びはじめています。

代表的なものが秋の七草にちなんだお菓子です。
『萩』、『尾花』、『葛』、『撫子』、『女郎花(おみなえし)』、『藤袴』、『桔梗』が秋の七草ですが、
その中でも今の時期に一番よく目にするお菓子が桔梗です。
京都では六月下旬より咲きはじめて、夏の時期に見頃を迎えます。

そもそもは、秋に咲く花だった桔梗が品種改良の末、今のように夏に見頃を迎えるようになりました。
夏に見る桔梗は涼やかでいいものです。
しかしながら、幼い頃より秋の七草として教えられてきたこともあり、どうしても秋の印象が強く残っています。

今回は、秋の印象が強い桔梗にちなんだお菓子から秋を存分に感じてください。
伝統を受け継いだ京菓子らしい抽象的な意匠のお菓子から歴史の重みを感じます。
美意識の高さを感じる外郎生地のグラデーション。
折りたたみ方だけで桔梗を表現してしまう、無駄のないお菓子が私の五感を揺さぶります。
五感が研ぎ澄まされていく感覚をみなさんも感じてください。
菓銘桔梗
店名鶴屋吉信
住所京都市上京区今出川通堀川西入
電話(075)441-0105
prev前月 次月next

きょうの和菓子の玉手箱きょうの和菓子の玉手箱

きょうのお菓子

月刊京都連載
和菓子歳時記

スマートフォン、タブレットを縦にしてご覧ください。