月刊京都連載 和菓子歳時記
2018
103

豊穣

神無月となった京都市内は、朝晩の気温が一気に下がり肌寒いと感じるようになってきました。
これからは、日中も気温が一段と下がり、秋がさらに深まってくることでしょう。

今月は、五穀豊穣を喜び感謝する祭りが多くの神社で執り行われます。
その代表的なお祭りが北野天満宮の『ずいき祭』です。

芋の茎のことを意味する『芋茎(ずいき)』。
その芋茎で屋根を葺き、野菜で飾り付けた珍しい神輿『ずいき神輿』が10月1日から西ノ京の御旅所に飾られています。
そして、4日の午後からは御旅所を出発して西ノ京界隈を巡行する還幸祭が執り行われます。
特に今年は、異常気象が続き、農作物の収穫に例年以上に心から感謝するお祭となるのではないでしょうか。

この時期、和菓子屋では五穀豊穣にちなんだお菓子を見かけます。
和菓子の原材料として必要な五穀『米・豆・麦・粟(あわ)・黍(きび)』。
この五穀がなければ、今までこちらでご紹介してきたお菓子を作ることもできません。
和菓子屋にとっては、『五穀豊穣』というテーマのお菓子は何よりも大切なのではないでしょうか。

今回は数多くある『五穀豊穣』というテーマのお菓子の中から一つご紹介させていただきます。
黄金色に輝き稲穂が垂れた実りの秋。
この時期、京都郊外では見慣れた光景です。
稲穂が実ることに感謝することを忘れてはならないと教えてくれているような外郎製のお菓子です。
菓銘豊穣
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
2018
1010

菊襲ね(きくがさね)

今秋は台風の到来が続き、さわやかな秋晴れがとても貴重に感じます。
気がつけば、金木犀の香りがどこからともなく漂う時期となってきました。
今週末の10月13日は、七十二候『菊花開(きくのはなひらく)』となります。

現在では、新暦で節句が行われるために9月のイメージがある菊ですが、実際にはこれから花開く時期です。
10月の中旬あたりから様々なところで菊花展がはじまります。
今年も鉢植えされた豪華な菊の花が並べられ、訪れる人々の目を楽しませてくれることでしょう。
今回は、菊にちなんだ意匠のお菓子をご紹介させていただきます。

桜と並び、日本の国花として親しまれてた『菊』。
菊は吉祥文様として好まれ、様々なところに用いられています。
特に日本の伝統的な衣装である『きもの』の柄としてよく見かけます。
その着物をイメージして作られた、こなしと外郎の裏打ちで菊の気品をそのまま感じるように仕上げられた
素敵なお菓子です。
菓銘菊襲ね(きくがさね)
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2018
1017

月あかり

神無月も半ばとなり藤袴が京都市内を彩っています。
古くから日本に存在している藤袴。
淡い藤色をおびたやわらかい独特な雰囲気の花は、和歌にも詠まれ古来より親しまれてきた野草です。
近年では環境変化により、野生種は激減の一途をたどり、絶滅危惧種に選定されました。
京都では藤袴を守ろうとするプロジェクトが数年前より始まり、関係者のご尽力によって、市内で身近に見かけることができるようになってきています。
この時期ならではの光景から京都の秋を感じていただければと思います。

今週末の10月21日は、『後の名月』と呼ばれる十三夜となります。
十五夜の『中秋の名月』は里芋を月にお供えすることから『芋名月』とも呼ばれています。
いっぽう、十三夜の『後の名月』は、栗や豆を月にお供えすることから『栗名月』や『豆名月』とも呼ばれています。
十五夜は、中国より伝わってきたものですが、十三夜は日本だけの風習です。

十五夜と十三夜のいずれかの月だけを見ると『片月見(かたつきみ)』といい縁起が悪いとされています。
京都市内では、残念ながら十五夜の月を見ることができませんでしたが、皆様のお住いの地域ではいかがでしたでしょうか。

今回は月にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
秋澄む京都の夜空にぼんやりと浮かぶ月。
刻々と流されて変わりゆく、気まぐれな雲によって神々しさを感じる月光。
そのような情景を感じる外郎製のお菓子です。
菓銘月あかり
店名茶寮・宝泉
住所京都市左京区下鴨西高木町25
電話(075)712-1270
2018
1024

ハロウィン

10月下旬となった京都市内は、朝夕のみならず日中の気温も下がり、また一段と秋の深まりを感じるようになってきました。
過ごしやすくなってきた秋の気候につられて、ついぶらりと京都を散策する近頃です。
散策していると、街にはオレンジ色の陽気なディスプレイが至るところで目に飛び込んできます。
もう来週は、ハロウィンです。

毎年、ニュースでは東京・渋谷駅前のスクランブル交差点の様子が取り上げられて、その異常な盛り上がりにただただ驚くばかりです。
京都の街中であのような光景は想像しがたいものがあります。
とは言っても京都は、学生の街。
近年、京都でも仮装をした人々を多く見かけるようになってきました。
時代の流れとともに京都のハロウィンもより盛大になってくるのかもしれませんね。

時代の流れといえば、和菓子の世界でも今やハロウィンにちなんだ意匠のお菓子が当たり前となってきました。
わずか数年前までは、限られたお店でしか見かけることがありませんでした。
時代の流れとは、恐ろしいものですね。

今回は、ハロウィンにちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
ハロウィンの象徴といえば、カボチャで作られた『ジャック・オー・ランタン』。
多くの和菓子屋でカボチャを模ったお菓子を見かけます。

そのお菓子とともに、見かけることが増えてきた『おばけ』を模ったお菓子。
一昔前までは、『おばけ』を題材にすることなんて京菓子では考えることができませんでした。
新しい風が吹き、京菓子の世界は伝統と革新の調和がとれているように感じます。
ひょっこりと愛くるしいお化けの意匠。
こんなお化けだったら、すぐにお友達になれそうです。
他人に迷惑をかけない程度にハロウィンを満喫して、楽しい思い出を作ってくださいね。
菓銘ハロウィン
店名二條若狭屋
住所京都市中京区二条通小川東入る西大黒町333-2
電話(075)231-0616
2018
1031

亥の子餅

秋らしい気候が続いている京都市内です。
街路樹の様子から季節の移ろいを感じるようになってきました。
春に観光客を魅了した桜たちは、一足早く、赤や黄色に色づいています。

そして、夏場に青々としていた御池通のケヤキ並木も少しずつ色づきはじめてきました。
陽光に煌めくケヤキたち。
街中にいながらにして神秘を感じる瞬間です。

いよいよ明日からは霜月。
この時期のお菓子は、やはり『亥の子餅』ではないでしょうか。
寒中に猪の肉を食べると身体が温まり、万病にかからないとされていましたが、殺生を慎むところから猪を
かたどった亥の子餅に代わったといわれています。

平安時代の宮中では、その年にとれた穀物で作られた亥の子餅を食べて無病息災を祈る『御玄猪(おげんちょ)』と呼ばれる年中行事が行われていました。
玄猪の儀は民間にも広まり、旧暦十月亥の日、亥の刻に亥の子餅を食べて冬の無病息災を祈ります。
また、猪は多産なところから、子孫繁栄を願ったともいわれています。

狛猪で有名な護王神社では、毎年11月1日に行われる年中行事『亥子祭』が執り行われます。
平安衣装を身に纏い、宮中で行われていた玄猪の儀を再現した雅な行事です。
拝殿上では、無病息災を祈って亥の子餅をつく所作『御舂ノ儀(おつきのぎ)』が行われます。
その後、一般の方も参加ができる提灯行列が護王神社を出て蛤御門(はまぐりごもん)から御苑内に入り、 御所『清所門(せいしょもん)』より御所内へ入り亥子餅を献上する『禁裏御玄猪調貢ノ儀(きんりおげんちょちょうこうのぎ)』が執り行われます。
お時間があれば、古式ゆかしいこちらの伝統行事に参加されてみてはいかがでしょうか。

亥の子餅は、一般的にはこしあんを求肥などで包んだとても簡素なお菓子です。
こちらのお菓子は、こしあんと共に秋の味覚である柿、栗、銀杏を羽二重で包んだとても珍しいものです。
昔は一般的な亥の子餅を販売されていたそうですが、お客様のご提案を取り入れて40年ほど前から現在のような亥の子餅を販売されています。
その当時は、食感が変わっているということが理由で京都の食文化として受け入れてもらうことができなかったそうです。
時代の流れと共に、世の中の食の好みが変化して、ようやく数年前からこちらの亥の子餅を買い求めてお店へ足を運ぶ方が増えてきました。
今ではお店には欠かせないこの時期のお菓子となっています。
みなさんも、こちらの亥の子餅を食べて、これから迎える冬の無病息災を祈ってみてはいかがでしょうか。
菓銘亥の子餅
店名鍵甚良房
住所京都市東山区大和大路通四条下ル小松町140
電話(075)561-4180
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