月刊京都連載 和菓子歳時記
2018
66

さくらんぼ

水無月となり、紫陽花や雨にまつわる話題が何かと多くなる時期です。
その話題にちなんだお菓子のご紹介はまたの機会にさせていただきます。

今回は、毎年この時期に楽しみにしているお菓子をご紹介させていただきます。
京都市内の果物店には、国内産の見た目にも美しい『佐藤錦(さとうにしき)』や『豊錦(ゆたかにしき)』といった品種のさくらんぼが店頭に並びはじめています。
商品に付けられている価格にびっくりされる方も多いのではないでしょうか。
『赤い宝石』などと表現されることにも納得です。
そのさくらんぼを表現した外郎製のお菓子です。
京菓子の特徴である抽象的な意匠というよりは、どちらかと言えば写実的。
色使いの妙で品を感じる愛らしいさくらんぼを表現しているところはまさに京菓子の神髄ではないでしょうか。

今月いっぱいまで販売されるそうです。
ぜひ、手のひらで可愛らしいさくらんぼを愛でてみてください。
菓銘さくらんぼ
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
2018
613

四葩

先週、梅雨入りの発表があった京都市内。
この時期らしいしっとりとした情景を楽しむことができるので、待ちに待ったと喜んでいらっしゃる京都好きの方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、近年は大雨が降ることも珍しくなくなってきました。
今年は、何事もなく、天からの恵みが大地へと届くことをただただ祈るばかりです。

梅雨といえば紫陽花を真っ先にイメージしてしまうのは私だけではないと思います。
日本人にとって紫陽花は身近な存在のように感じます。
『四葩』、『七変化』、『八仙花』、『手鞠花』など数多くの異名があることからも日本人が紫陽花に寄せる想いをうかがい知ることができます。

この時期、和菓子屋では紫陽花にちなんだお菓子を数多く見かけます。
今回、ご紹介させていただくお店は京菓子らしい抽象的な意匠が店頭に並ぶお店として有名な和菓子店です。
そのお店のご主人が、「うちの店のお菓子の中では、どちらかと言えば写実的なお菓子です。」と語られたお菓子がこちらです。
紫陽花のお菓子の代表的な意匠として、餡を錦玉で包んだお菓子やきんとんに錦玉をあしらい雨に濡れた紫陽花に見立てたお菓子があります。
それらのお菓子は、紫陽花の雰囲気を感じとってもらえる京菓子らしい抽象的な意匠です。
一方で今回のお菓子は、紫陽花の花びらをクローズアップして羽二重で表現したお菓子です。
写実的と言っても、こなしのようなもので成形をしているお菓子とは異なり、羽二重のやわらかい雰囲気がお菓子を抽象的な意匠へと仕上げてくれています。

真夏になると暫くの間、羽二重製のお菓子は店頭から姿を消します。
その前に、一度召し上がって真夏を迎えてみてはいかがでしょうか。
菓銘四葩
店名塩芳軒
住所京都市上京区黒門通中立売上ル飛騨殿町180
電話(075)441-0803
2018
620

露の華

梅雨の中休みとなった先日の週末の京都市内。
光のシャワーが降り注ぐ天候は私たちにとってはとても喜ばしいことです。
可憐に咲く紫陽花たちの様子はどこか悲しげ。
雨に濡れた紫陽花は、花の色が鮮やかに映り、とても風情を感じます。
今回は、そのような情景を表現したお菓子をご紹介します。
紫陽花の花の色『ピンク』、『青』、『白』を餡で表現して、葛で雨に濡れた紫陽花の様子に仕上げているお菓子です。
葛製のお菓子から本格的な京都の夏の訪れをひと足早く感じてみてはいかがでしょうか。
菓銘露の華
店名茶菓 えん寿
住所京都市右京区太秦多藪町14-93
電話(075)432-7564
2018
627

水無月

早いもので一年の折り返しが近づいてきました。
皆さんにとって、この半年間はどのような月日となったことでしょうか。
私のこの半年間は、昨年以上に和菓子を口にする機会が増えた日々となりました。
そして、この6月は様々なお店の水無月を数多くいただいている幸せな時間を過ごしています。
和菓子店にお行儀良く並んでいる三角形のお菓子を見かけるとついつい買い求めてしまいます。
近年では水無月の存在が他府県の方々に多く知れわたり、和菓子店には水無月を求めて観光客がお越しになることが増えてきているそうです。
今回は、京都に暮らす人々にとっては、この時期の特別なお菓子である水無月をご紹介させていただきます。
京都で暮らす人々にとっては元旦の次に欠かせない特別な一日である6月30日。
この日は、この半年の罪のけがれを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事『夏越祓(なごしのはらえ)』が各神社で行われます。
神社境内に飾られた茅(ちがや)を束ねて作られた大きな輪を『水無月の夏越しの祓する人はちとせの命のぶというなり』と唱えながらくぐる『茅の輪くぐり』。
茅の輪をくぐり抜けると、夏の疫病や災厄から免れるといわれています。
その『夏越祓』にいただくのが『水無月』という和菓子です。
小豆には邪気払いの意味があり、外郎で模られた三角の形は暑気を払う氷を表しているといわれています。
その昔、旧暦の6月1日は『氷の節句』といわれ、室町時代には幕府や宮中で年中行事とされていました。
『氷室(ひむろ)』(現在の北区西賀茂地区)で冬に製造して貯蔵させていた氷を御所に取り寄せて口にして暑気払いを行ったそうです。
しかし、庶民にとっては夏の水はとても貴重。
それ以上に貴重だったのが氷。
そこで、氷をかたどったお菓子が作られるようになりました。
それが水無月の始まりだと言われています。
こちらのお店では、小豆の選別を行い、炊き上げた小豆を砂糖で密漬けを行い、艶やかなふっくらとしたものを使用しています。
「見た目がきれいになるように丁寧に小豆を並べています。」と語られるご主人。
その言葉通り、こしのある外郎(ういろう)地に乗っている艶やかな小豆たち。
小豆好きの方々にとっては、見ているだけで幸せな気分になるのではないでしょうか。
6月30日は、水無月を召し上がって邪気払いと暑気払いを行って、素晴らしい半年をお過ごしください。
菓銘水無月
店名笹屋春信
住所京都市西京区桂乾町66-1
電話(075)391-4607
prev前月 次月next

きょうの和菓子の玉手箱きょうの和菓子の玉手箱

きょうのお菓子

月刊京都連載
和菓子歳時記

スマートフォン、タブレットを縦にしてご覧ください。