月刊京都連載 和菓子歳時記
2018
81

天の川

疫神社夏越祭を終え、一ヶ月にわたって行われた祇園祭が今年も終わりました。
8月の京都市内も神事やイベントが数多く行われます。
8月は、旧暦の七夕にあたる時期です。

今年も『京の七夕』が行われます。
今年で9回目を迎えるイベントは京都の夏の風物詩として定着しました。
主会場の『堀川エリア』、『鴨川エリア』をはじめ『梅小路エリア』、『岡崎エリア』、『北野紙屋川エリア』の5会場からなるイベントです。
本日8月1日から堀川エリアの一環として他の会場よりもひと足はやく、世界遺産の二条城ではライトアップが始まります。
今年は『妖怪たちの七夕』をテーマに二之丸庭園のライトアップ、二之丸御殿(大広間)でのプロジェクションマッピングなどが行われます。
果たしてどのような雰囲気の二条城となるのか興味津々です。
また、8月4日より始まる堀川遊歩道のライトアップでは、毎年恒例の『光の天の川』に代わり『ほたるの散歩路』が行われます。

様々な新たな演出で行われる『京の七夕』。
今年はどのような素敵な夏の夜を届けてくれるのか今から楽しみです。

今回は『京の七夕』にちなみ七夕の意匠のお菓子をご紹介させていただきます。
夜空に見える天の川。
ロマンチックな印象に仕上げた葛製のお菓子です。
天の川は年中見ることが可能ですが、特に綺麗に見えるのが8月のこの時期です。
しかも月明りがない新月の夜空が最適だと言われています。
今年は8月11日が新月となります。
お菓子をいただきながら夏の夜空を見上げるのもいいかもしれませんね。
菓銘天の川
店名二條若狭屋
住所京都市中京区二条通小川東入る西大黒町333-2
電話(075)231-0616
2018
88

花ゆふ

テレビや新聞で連日のように猛暑を伝えるニュースを目にしますが、暦の上では立秋を迎えました。
例年であれば暑い中にも小さな秋を感じる時期です。
果たして今年は、どのような小さな秋を感じることができるでしょうか。
ただ今、京都市内では落葉広葉樹の緑が色濃くなり、その中に一際鮮やかに咲く花『百日紅(サルスベリ)』を見かけることができます。
この暑い夏の時期に私たちの心を癒してくれるとても貴重な花です。
花の咲く期間が長く、百日もの間、花を楽しめることから百日紅という名前が付けられました。
一つ一つの花は、朝に開花して夕方には散ってしまう一日花です。
『散れば咲き散れば咲きして百日紅』
江戸時代に活躍した俳人・加賀千代女が詠んだ句です。
百日紅のことを知れば、とても味わい深く感じます。
今回は百日紅にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
京都市内では、とても馴染みがある百日紅ですが、和菓子屋で百日紅の意匠のお菓子を見かけることはほとんどありません。
そんな珍しい百日紅にちなんだお菓子。
ピンク色の花を沢山付ける可愛らしい姿を錦玉羹と村雨で表現しています。
お菓子の色にこだわって作られた美しい色合いのお菓子。
そして、風に揺れる花の情景を想像して名付けられた【花ゆふ】という美しい菓銘。
知れば知るほど、素晴らしさを感じることができるお菓子です。
菓銘花ゆふ
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2018
815

送り火

迎え鐘が鳴り響いた先日の京都市内。
暑い中にも盛夏から晩夏へと移ろう兆しを至るところで感じるようになってきました。
日が暮れる頃、様々な寺院で灯明が灯され幻想的な雰囲気となるお盆。
揺らめくろうそくの灯りを見つめながらご先祖様を想います。
心安らかな日々を過ごせていることに感謝をするひと時。
そして、明日はご先祖様を極楽浄土へと道に迷うことなく帰っていただくように送る『五山の送り火』が
行われます。
午後8時に東山如意ヶ嶽の『大』の字の点火を皮切りに、松ヶ崎西山と東山の『妙法』、西賀茂船山の『舟形』。
そして大北山の『左大文字』と続き、最後に嵯峨鳥居本曼荼羅山の『鳥居形』が点火されていきます。
今回は、五山の送り火にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
以前、ご紹介させていただきましたように祇園祭にちなんだお菓子は、京都市内の限定的な地域でしか
見かけることがありませんが、五山の送り火にちなんだお菓子は地域関係なく見かけることができるお菓子です。
そのことからも、いかに五山の送り火が、地域を問わずに京都に暮らす人々とって身近であるかをうかがい
知ることができます。
京の夜空を照らす送り火。
その送り火を眺めながら心穏やかに手を合わす人々。
過ぎ行く夏とご先祖様に別れを惜しむひと時。
そのような情景を感じとることができる外郎(ういろう)製のお菓子です。
菓銘送り火
店名鍵善良房
住所京都市東山区祇園町北側264番地
電話(075)561-1818
2018
822

初萩

お盆が明けて、一気に過ごしやすくなった京都市内です。
夏の空気から秋の空気へと入れ替わったことを実感するような朝夕の気候にほっと胸をなでおろした方も多いのではないでしょうか。
和菓子屋には初秋を感じるお菓子が並びはじめています。
秋一番に蕾をほころばせる『萩』。
萩の別名を『鹿鳴草(しかなぐさ)』。
その名の通り、牡鹿が鳴く頃に開花するところから名付けられました。
秋の七草のひとつである萩は、万葉集の中で一番多く詠まれている花です。
古(いにしえ)の人々も秋風にそよぐ萩の様子を見て深まる秋を過ごしたことでしょう。
京都では、萩の花が見頃へと向かうのはまだ先となりますが、まずはお菓子で秋を感じてください。
京都では『かしら道明寺』と呼ばれている6ツ割道明寺を使用して作られた生地。
その上に氷餅を散らし、ピンク色に染めたみじん粉で咲き始めた萩を表現したとても上品な意匠のお菓子です。
菓銘初萩
店名老松(北野店)
住所京都市上京区北野上七軒
電話(075)463-3050
2018
829

あかね空

台風が過ぎ去り、蒸し暑い日々が続いている京都市内です。
10日ほど前の秋らしい気候はどこへ行ってしまったのでしょか。
本格的な秋の訪れは、しばらく先になりそうです。
しかし、日が暮れはじめる時間は、一ヶ月前に比べるとかなり早まってきました。

『秋の日は釣瓶落とし』ということわざがあるように秋の夕焼けの様子は刻々と変化をしていきます。
私のお気に入りの夕焼けスポットは、なんといっても広沢池。
あかね色となった空が水面に映り、シルエットとなっていく山々。
あまりの美しさに心が癒される瞬間です。

今回は、秋の夕焼けを表現したお菓子のご紹介です。
今まで山地で過ごしていたアキアカネが山から下りてきて、平地で過ごす時期です。
秋の季語である『赤とんぼ』はアキアカネだと言われています。
夕焼けを背景に赤とんぼが飛び交う様子を表現したこなし製のお菓子です。

時の流れを感じるグラデーション。
和菓子の素晴らしさを存分に感じることができる日本らしいお菓子です。
菓銘あかね空
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
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