月刊京都連載 和菓子歳時記
2018
13

悠久

新年の和菓子屋さんには、多くの縁起物にちなんだお菓子が並び、店頭が一年で最も華やかになります。
日頃は、店頭で上生菓子を販売していない和菓子屋さんも販売するほど、新年を迎えた京都には欠かせないお菓子です。
松竹梅をはじめ鶴亀、干支にちなんだ犬のお菓子など、おめでたい意匠のお菓子たちに目を奪われます。
見ているだけでも幸せな一年となりそうな気分。
口に入れると、その気分は更に高まります。
「これで幸せな一年を約束されたようなもの!」
そのように思いながら毎年、お菓子と共に新年を過ごします。
今回は、そのような気分にさせてもらえるお菓子をご紹介します。
新年を迎え新たな気持ちで、また一歩スタートを切る想い。
初空の美しい色合いを表現したお菓子です。
京都のお正月に生菓子をいただくという文化は大切な伝統として、今なお受け継がれています。
新しい文化も加わりながら、果てしなく続いて欲しいという思いを重ねて付けられた『悠久』という菓銘です。
みじん羹の中の大納言小豆がアクセントとなり壮大な天空を感じるお菓子です。
大切な一年のはじまりに皆さんもぜひ和菓子で縁起を担いでみてはいかがでしょうか。
菓銘悠久
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2018
110

初詣

年が明けて、初節句も終わり早いものでもう10日となりました。
祇園界隈では、笹に宝船や小判などいっぱいの縁起物を飾りつけた福笹を持ち歩いた人々が行き交います。
『節目正しく真直に伸び』、『一年中青々と繁る』、『弾力があり折れない』という理由から商売繁盛、
家運隆盛の象徴として笹は親しまれてきました。
京都ゑびす神社の御本殿前には、「今年こそは!」と意気込む方。
「今年も昨年同様に!」と感謝の気持ちも込めてお詣りをされる方など様々。
さて、みなさんはどのような気持ちでお詣りされるのでしょうか。
御本殿前でお詣りをする際には、まず鈴を鳴らし、清らかな音色で自身を祓い清めることから始まります。
今回は、お詣りの際に欠かすことができない鈴をモチーフにしたお菓子のご紹介です。
京都ゑびす神社からほど近くで営む、こちらのお店がこの時期販売しているお菓子は、色鮮やかで神々しくも
感じる外郎製のお菓子です。
その名も『初詣』。
正月は忙しくて初詣がこの十日ゑびすという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
縁起物の一つとしてご参拝のお帰りにお立ち寄りになって福を引き寄せてみてはいかがでしょうか。
多くの参拝者でなかなか鈴を鳴らしてのお詣りは大変かもしれませんが、せっかくお詣りに来たからには鈴を
鳴らしてのお詣りをしたいものですね。
菓銘初詣
店名鍵善良房
住所京都市東山区祇園町北側264番地
電話(075)561-1818
2018
117

探梅

最高気温が10℃を切る寒い日中が続いた先週の京都市内。
ひと気のない寺社で凛とした空気の中を過ごすひと時は格別です。
お正月気分もひと段落して、例年であれば、しばらくの期間は静かな京都が戻ってきます。
日常から離れて、疲れた心を癒しに出かけてみてはいかがでしょうか。
1月半ばを過ぎると気になるのが北野天満宮の梅の花。
北野天満宮へ出かけては、ほころんだ蕾を探して回ります。
境内北側の摂社・地主神社の傍らに植えられている『雲龍梅』に数輪のほころんだ蕾を見つけました。
枝振りがクネクネと曲がっている様子が独特で印象的な梅です。
その様子がまるで龍が天に舞い昇るように見えるところから『雲龍梅』と名付けられています。
来週の初天神が行われる頃には、多くの蕾がほころんでいるかも知れません。
ひと足早い春を感じてみてはいかがでしょうか。
今回は、この時期に咲く、梅にちなんだお菓子をご紹介します。
早咲きの梅を求めて探すことを『探梅(たんばい)』といい、俳句の世界では、冬の季語として扱われます。
その探梅を菓銘にした梅を模った道明寺製のお菓子です。
この時期らしく、氷餅をまぶして梅の花に雪が降り積もった情景を表現しています。
寒さの中に、春を感じるお菓子です。
菓銘探梅
店名長生堂
住所京都市左京区下鴨上川原町22-1
電話(075)712-0677
2018
124

紅白つばき

一月も終盤になり、京都の寺社仏閣では、椿の蕾がほころび始めている光景を目にするようになってきました。
俳句の世界では、春の季語である『椿』。
桜、梅に並び、まさに文字通りに春の代表的な花です。
花の歴史は古く、奈良時代にまで遡ります。
古事記にも登場し、古くから神聖な樹木とされてきました。
その椿ですが、現在まで品種改良が繰り返され、『藪椿』、『蝦夷錦』、『侘助』など、国内には2000種以上の種類があると言われています。
ひと言で椿と表現するのは難しいのが現状かもしれません。
今回は、その椿にちなんだお菓子のご紹介です。
縁起物として様々な種類がある和菓子。
それは人々の暮らしに根付いてきたからこそだと思います。
古来より長寿の木とされ、縁起物として親しまれてきた椿。
縁起物のイメージを大切に紅白の色合いで椿を模った練り切り製のお菓子です。
椿が咲くこの時期だけの縁起物のお菓子で縁起を担いでみてはいかがでしょうか。
菓銘紅白つばき
店名亀屋
住所京都市山科区四ノ宮堂ノ後町17
電話(075)581-0016
2018
131

懸想文

明日からは如月。
もう二十四節気『立春』が間近となってきました。
京都市内を散策していると春の兆しを見つけられる時期です。
立秋から下がりはじめた平均気温が、立春を迎えるとともに上昇へと転じはじめます。
その立春の前日が『節分』となります。
文字通りの季節の分かれ目には、邪気が入りやすいと考えられており、その邪気払いの一つとしてお馴染みの
豆まきが現在も行われています。
京都では、様々な社寺で節分の日に、節分行事が執り行われます。
その節分行事では、鬼が出てくる『追儺式』が一般的でよく見られる神事です。
今回は、節分に京都で唯一、須賀神社で見られる懸想文売りにちなんだお菓子のご紹介です。
2月2日と3日に須賀神社では実際に存在していた懸想文売りを再現した二人組に会うことができます。
懸想文とは、現在で言うラブレター(恋文)のようなもの。
限られた身分の人しか文字が書けなかった時代。
貧しくとも教養のある貴族達が副業として、ラブレターを知性溢れる文脈で代筆してました。
貴族たちは、自身の身元が分からない様に烏帽子に水干姿で顔を隠して梅の枝を肩に担ぎ懸想文を売っています。
懸想文売りが持ち歩いていた、梅の木の枝に懸想文を挿した様子を表現した白小豆の羊羹製のお菓子です。
想いを寄せる方へ懸想文とともに手渡してみてはいかがでしょうか。
菓銘懸想文
店名茶寮・宝泉
住所京都市左京区下鴨西高木町25
電話(075)712-1270
2018
27

如月

2月となり、立春を過ぎました。
寒い日が続いていますが、春の兆しを見つけることができる楽しみな一か月です。
2月はご存知のように別名を『如月(きさらぎ)』と呼びますが、その由来は諸説様々です。
『衣更着』、『気更来』、『来更来』などの漢字が意味するものが諸説としてあります。
その由来とは関係のない『如月』という漢字。
万物が次第に動きはじめるといった意味を持った中国の2月の異名『如月(じょげつ)』からといわれています。
確実に春の足音は近づいてきている2月です。
その『如月』が菓銘となったお菓子を今回はご紹介させていただきます。
本日2月7日は『初午(はつうま)』。
稲荷神のお祭りです。
例年、伏見稲荷大社は多くの参拝者で賑わいます。
初午は、伏見稲荷大社の主祭神であるウカノミタマが、和銅4年(711年)の初午の日に伊奈利山(いなりやま・
京都市東山連峰)へ降臨された日といわれています。
それ以降、伏見稲荷大社に『初午詣(はつうまもうで)』を行うようになりました。
神社の参拝に欠かすことができない鈴。
鈴の清らかな澄んだ音色には、悪いものを祓う力があると信じられてきました。
こちらの薯蕷製の鈴を模ったお菓子は、初午にちなんで昨年販売されました。
今年は、『鈴の緒』という初午にちなんだお菓子を販売されます。
同じ初午にちなんだお菓子を見比べてみるのも面白いかもしれませんね。
菓銘如月
店名游月
住所京都市左京区山端壱町田町8-31
電話(075)711-1110
2018
214

玉水仙

京都の和菓子屋の歴史がまた一つ幕を閉じようとしています。
近代日本への転換点と位置づけされている大政奉還の舞台となった『二条城』。
その二条城からほど近く、油小路通りに面した和菓子店『源水』。
江戸時代後期1825年に創業のお店です。
文豪・川端康成にこよなく愛された半生菓子『ときわ木』は、あまりにも有名なお菓子です。
羊羹地に大納言小豆をのせて、その上にすり蜜をかけたお菓子『ときわ木』。
松の幹を表現したお菓子は、縁起菓子として歌舞伎役者が襲名する際にも利用されてきました。
その『ときわ木』をはじめとする様々なお菓子をいただくことができるのも3月31日までとなりました。
もちろん、四季折々を感じることができる上生菓子をいただくことができるのも同日までです。
今の時期、こちらのお店で販売されている上生菓子は、健気に足下で咲く水仙を模ったもの。
店内には川端康成直筆の年賀状や過去に制作された工芸菓子が飾られており、 お店の歴史を垣間見ることが
できます。
残すところ僅かですが、ぜひお時間を作って出かけてみてはいかがでしょうか。
菓銘玉水仙
店名源水
住所京都市中京区油小路通二条下ル
電話(075)211-0379
2018
221

梅花祭上用

『東雲(しののめ)』が少しづつ早まり、確実に本格的な春の訪れが近づいていることを知らせてくれます。
いよいよ、北野天満宮『梅花祭』が近づいてきました。
ご祭神の菅原道真公の命日である2月25日に執り行われる年中行事です。
梅をこよなく愛したといわれる菅原道真公。
その梅の開花状況は、一部の梅は開花しているものの全体的には、寒さの影響で例年に比べて遅れています。
昨年のように梅の香しい匂いが境内に広がることはなさそうですが、日曜日と重なるため、多くの参拝者で賑わう
ことでしょう。
今回は、その梅花祭にちなんだお菓子のご紹介です。
梅花祭といえば、やはり上七軒の芸舞妓さん達の奉仕により行われている華やかな野点大茶湯。
こちらの野点は、1587年(天正15年)に豊臣秀吉が行った北野大茶湯(北野大茶会)にちなみ昭和27年より、
上七軒に関わる方々の協賛によって始まり現在に至ります。
その野点の際にいただくことができるお菓子がこちら。
多くの方が目にして口にした馴染みのあるお菓子だと思います。
毎年、こちらのお菓子の意匠から春を感じる方も多いのではないでしょうか。
そのお菓子を提供されているのが、上七軒に店を構える和菓子店『老松』。
店名は北野天満宮の第一摂社である老松社にちなみます。
店内には、京都の文化を感じる数多くの和菓子が並んでいます。
もちろん、春の訪れを感じる上生菓子たちも。
北野天満宮に訪れた際には、気軽に立ち寄って京都の文化、春の訪れを感じにみてはいかがでしょうか。
菓銘梅花祭上用
店名老松(北野店)
住所京都市上京区北野上七軒
電話(075)463-3050
2018
228

散歩道

早朝の寒さに覚悟を決めて布団から飛び起きる日々が続いています。
しかし、春の訪れは確実にやってきているようです。
陽が昇りはじめてから、しばらくすると寒さが一気に和らぎ感じる温もり。
明らかに今までとは違う太陽の陽射しです。
寒さに耐えながら過ごしていた動植物が目覚める季節。
京都市内では、山、川、寺社などの自然が身近にあるため、小さな春を感じやすいのではないでしょうか。
私のお気に入りは、半木の道。
遮るものなく、遠くまで見渡せる山々と広い空を眺めながら賀茂川沿いを散歩する幸せな時間。
今回のお菓子のように、足もとで顔を出してくれる小さな春を探してみませんか。
お菓子に込められた春への期待。
穏やかな春、笑顔が溢れる春でありますように!
こちらのお菓子と共に素敵な春の訪れを感じてみてはいかがでしょう。
菓銘散歩道
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2018
37

春霞

京都市内の梅がここ数日の暖かさに誘われて一気に開花しました。
梅林が見頃となった北野天満宮では、『京菓子コレクション』が先日行われました。
多くの方が来場され、京都の老舗和菓子店の味を香しい梅の花と共に楽しまれていました。
みなさんの楽しそうな雰囲気を拝見していると改めて和菓子が幸せを届けてくれていることを感じました。
和菓子に関わっていられることを有難く思います。
これからの時期、よく耳にする『春霞(はるがすみ)』という言葉。
霞は、霧や靄(もや)の事であり、遠くの風景がぼやけている現象のことです。
古来より、現象は同じでも、春には『春霞』、秋には『秋霧』と呼び方を変えて表現しています。
このようなことからも古来の人々は、言葉をとても大切に扱ってきたことを感じることができます。
今回は、その春霞にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
外郎地に春を代表する色の若葉色と桃色をぼかして、風景がぼやけている様子を表現しているお菓子です。
このような色合いのお菓子を目にするといよいよ春がやって来たんだと感じます。
お菓子から、みなさんそれぞれの風景を思い浮かべて春を感じてみてはいかがでしょうか。
菓銘春霞
店名茶寮・宝泉
住所京都市左京区下鴨西高木町25
電話(075)712-1270
2018
314

桜餅

京都市内に植えられている河津桜の固かった蕾がようやくほころび始めてきました。
これからの時期、和菓子好きの方をはじめ多くの方々が買い求める『桜餅』。
春を味覚から存分に感じることができるお菓子です。
小麦粉などで生地を焼いた皮で餡を巻き、塩漬けした桜葉で巻いた関東風の『長明寺』。
そして、道明寺粉を使用して餡を包み、その後、塩漬けした桜葉で包んで仕上げた関西風の『道明寺』。
いずれも日本を代表する春のお菓子と言っても過言ではないのではないでしょうか。
こちらのお店の桜餅は、京菓子らしく、二枚の桜葉を使用して仕上げられた道明寺の意匠となっています。
口いっぱいに広がる桜の香り。
幸せを感じる瞬間です。
楽しみな時期がやってきました。
菓銘桜餅
店名船屋秋月
住所京都市右京区宇多野福王子町13-3
電話(075)463-2624
2018
321

花見だんご

各地から花便りが届けられるようになってきました。
京都では、出町柳・長徳寺のオカメ桜や京都御苑・近衛邸の糸桜などが咲き京都を彩っています。
桜好きの方は、気分がソワソワする頃ではないでしょうか。

そして、気になるのがおいしそうな和菓子。
どのお菓子にしようかと目移りしまうほど数多くのお菓子が店頭に並びます。
その中でも、この時期に一度は食べたい華やかな三色のお団子。

花見だんごとして皆さんにも親しまれていることだと思います。
市民権を得ていると言っても過言ではない、お花見には欠かせないお菓子です。

お花見は平安時代には、既に貴族の間で行われていました。
その当時の桜はソメイヨシノではなく山桜で、和歌を詠み合ったり、雅楽や舞などの風流(ふりゅう)を楽しむものでした。
時代を経て1598年に行われた『醍醐の花見』で諸国のお菓子が持ち寄られて、現在のような風習のきっかけになったと伝わっています。
上新粉を原料にしたお団子の色は先から『ピンク』・『白』・『緑』の3色が一般的です。

その理由は諸説あります。
その中で私が好きなのは、桜にちなんだ説。
桜の蕾をピンク色で表現して、桜の花を白色で表現。
そして、花が散った後の葉を緑色で表現しているという説です。
真偽は定かではありませんが、桜の時期に食べるのですから、桜のことを想いながら食べたいものです。
そして、京菓子らしい餡で作られたお団子も一度は召し上がっていただきたいお菓子です。
お花見のお供にいかがでしょうか。
菓銘花見だんご
店名游月
住所京都市左京区山端壱町田町8-31
電話(075)711-1110
2018
328

駒止の桜

京の春を伝える風物詩『北野をどり』がはじまり、いよいよ京都市内は本格的な春の到来となりました。
ソメイヨシノも花開き、今週末は百花繚乱の京都市内となりそうです。
京都の和菓子屋の店頭には日を追うごとに桜にちなんだ華やかな彩り豊かなお菓子が並びます。
京都の和菓子屋は、京都に関わるお菓子だけを作っているように思われている方も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、京都のみならず百人一首や万葉集など様々なものから職人さんたちの心に響いたものを題材に
して作られています。
もちろん、京都にちなんだお菓子が多いのは言うまでもありません。
今回は、京都から離れて富士宮市で花咲く桜にちなんだお菓子です。

最古の山桜として、国の天然記念物にも指定されている日本五大桜の一つ『狩宿の下馬桜』。
1193年に源頼朝公が富士の巻狩りを行った際に、この桜の前で下馬し、馬を繋ぎ止めたと伝えられています。
そこから『駒止の桜』とも言われています。
また、江戸幕府第15代将軍・徳川慶喜公もこの桜に魅せられて
『あはれその 駒のみならず 見るひとの 心をつなぐ 山桜かな』と詠んだと伝わります。

桜の色合いに鮮やかに映えるように、手綱を青色にして作られたお菓子。
古来から多くの人々を魅了してきた桜の気品と美しさをお菓子で表現したそうです。
中には桜餡が包まれており、味覚からも桜を感じることができます。
菓銘駒止の桜
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2018
44

桜餅

今年の春は、急ぎ足で私たちの前を過ぎていくようです。
4月になったばかりだと言うのにソメイヨシノはひらひらと舞い散り、遅咲きの八重紅枝垂はもう既に見頃となっています。
例年よりも早く見頃のピークを迎えた京都の桜たちです。

そのおかげで、今年は月刊京都4月号でご紹介させていただいたような桜と満月の競演を楽しむことが出来ました。
週末ということあり、多くの方が夜空に浮かぶ満月を愛でながら桜に酔いしれたことだと思います。
来年の満月は3月21日。
来年は桜と満月の競演は、一部の早咲きの桜のみとなりそうです。

みなさん、桜シーズンの代表的な和菓子『桜餅』を召し上がられましたでしょうか。
私は、もちろん今年も多くの桜餅をいただきました。
京都では、道明寺製の桜餅が関西風として親しまれています。

その京都の中で、関東風とされている長明寺製の桜餅をいただくことが出来る和菓子店があります。
小麦粉などで作った生地を薄く焼いて、袱紗包みのようにこしあんを包んだお菓子です。
京都では道明寺製の要望が多い中、あえて珍しい桜餅を販売されています。
特別な理由ではなく、ただただ、こちらのお菓子が好きで気に入っているからだそうです。
お店の自信作をみなさんも一度、召し上がられてはみてはいかがでしょうか。
菓銘桜餅
店名茶寮・宝泉
住所京都市左京区下鴨西高木町25
電話(075)712-1270
2018
411

山吹きんとん

今春は、ゆっくりと季節の移ろいを感じる間もなく、次から次へと草花が咲き進んでいます。
街路樹として植えられているハナミズキが咲き、京都の街並みを彩ります。
山吹や霧島つつじ、そして藤までもが花を咲かせ始めています。
例年であれば、4月下旬頃に目にする光景です。
松尾大社では、早くも山吹の開花が始まり、境内に彩りを添えています。
京都で山吹の名所として知られており、見頃の時期になると多くの参拝者で賑わいます。
境内を流れる一ノ井川の畔に植えられている3000株の山吹。
細い茎の先に咲く八重の山吹が風にたなびきながら一ノ井川の水面を山吹色に染めた光景は圧巻です。
現在のところ五分咲き程度ですが、今週末あたりには見頃に近づいていることでしょう。
今回は、その山吹にちなんだお菓子のご紹介です。
社寺のみならず、沿道などで咲いている様子を見かける山吹。
身近に感じる草花の一つですが、山吹にちなんだお菓子は、私の知る限りでは意外にも少なく、あまり見かける
ことがありません。
昨年、太秦の大映通り商店街にオープンしたこちらの和菓子店では、山吹にちなんだお菓子が店頭にならびます。
葉と花をイメージして作られた、二色に染め分けたきんとん製のお菓子。
驚くほどにやわらかく、口当たりの良さがとても印象に残ります。
ご店主が厳選された日本茶と一緒に召し上がっていただきたいお菓子です。
菓銘山吹きんとん
店名茶菓 えん寿
住所京都市右京区太秦多藪町14-93
電話(075)432-7564
2018
418

たけのこ

京都・西山から長岡京市にかけて車を走らせていると『朝堀り』という文字が目に付くようになってきました。
タケノコを販売している露店や店舗の看板です。
京都の春を告げる野菜の一つです。
タケノコが好きな方にとっては、待ちに待った時期がやってきましたね。
タケノコは、地表に顔を出してから10日ほどで竹となる、まさに旬の野菜です。
タケノコを見ると10年程前に知人が所有している竹林でタケノコ掘りをした記憶が甦ってきます。
トンガという刃の幅が狭い鍬(くわ)を使い、わずかな地割れを頼りに掘り起こしていきます。
一心不乱に堀り、沢山のタケノコを収穫した代償として、不覚にも両手にマメを作ってしまいました。
今となっては、懐かしい思い出です。
和菓子屋さんにもこの時期、タケノコをモチーフにした和菓子が並びます。
お菓子で作られたタケノコの様子もお店によって様々。
こちらのお店のお菓子は、タケノコの穂先がとても印象的です。
本物のタケノコはもちろんのこと、お菓子のタケノコも召し上がって季節を感じてくださいね。
菓銘たけのこ
店名亀屋光洋
住所京都市左京区一乗寺払殿町17-12
電話(075)711-3764
2018
425

藤浪

そよ風に揺れる花房。
平等院鳳凰堂前の藤棚では、高貴な藤色の花が優雅に咲いている様子を一目見ようと多くの観光客で
賑わっています。
近年は、花つきが悪く、もうあの素晴らしい光景を見ることを諦めていた昨年。
今年は、藤棚から花房が1メートルほどに伸びて咲き、数年前の素晴らしい光景が戻ってきました。

たおやかに咲き、揺れ動く花房から洩れる光のシャワー。
その光景はまさに神々しく、京都の貴族たちに愛されたのも納得です。

柔らかな甘い香りに誘われてクマバチが気持ち良さげに飛び回っています。
大きな姿かたちをしているクマバチが飛んでいるのを見て、びっくりして逃げ惑う様子をよく見かけますが、
クマバチはとても穏やかなハチです。
よほどの事がない限りは、人を攻撃することはありませんのでご安心ください。
クマバチと共に藤の花を楽しんでくださいね。
見頃は、今週末あたりまでと言うことです。藤の花、そして眩いばかりの新緑を存分に楽しんでみては
いかがでしょうか。

今回は、その藤の花にちなんだお菓子のご紹介です。
高貴な藤色をお菓子全体のイメージ色にして、花房をいら粉で表現した薯蕷製のお菓子です。
初夏の爽やかな風をお菓子から感じてみてはいかがでしょうか。
菓銘藤浪
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2018
52

あやめ薯蕷

ゴールデンウイークの真っ只中ですが、みなさんはどのように過ごされているのでしょうか。
ひょっとすると、旅先から見てくださっている方もいらっしゃるかもしれません。
京都市内は多くの観光客で賑わっています。
知人より京都のオススメの場所を尋ねられることが増える時期です。
5月の京都市内は、どこも新緑が美しく、どのように回答をさせていただければいいのか悩んでしまいます。
悩んだ挙句、何度も京都観光をされている方には、梅宮大社をお勧めするようにしています。
池泉回遊式の神苑は、咲耶池の周りにアヤメやカキツバタなどが花を開かせる頃。
『いずれアヤメかカキツバタ』と区別できない例えとして用いられるようにアヤメとカキツバタは
よく似ている植物です。
簡単な見分け方は、乾いた土で花を咲かせているのがアヤメであり、湿地を好むのがカキツバタです。
また花の違いは、花びらの中央部に網目模様があるのがアヤメであり、カキツバタは花びらの中央部に
白い筋模様が入っています。
初夏の陽射しに爽やかな色合いのアヤメやカキツバタたちが涼しげに咲いている様子は、お菓子の題材
としてよくこの時期に取り上げられます。
今回は、アヤメにちなんだお菓子のご紹介です。
薯蕷饅頭にアヤメの花の焼印を入れた後、職人さんが一つ一つ、手書きで葉を表現しています。
和菓子には、様々な表現の方法があることに驚かれた方もいらっしゃることでしょう。
こちらのお菓子から存分に初夏を感じてみてはいかがでしょうか。
菓銘あやめ薯蕷
店名中村軒
住所京都市西京区桂浅原町61
電話(075)381-2650
2018
59

藤の精

葵祭の『路頭の儀』と『社頭の儀』が来週に迫ってきました。
どうしても優美な行列が注目され一大イベントのように採り上げられますが、平安時代より国家的行事として
受け継がれている勅祭です。
5月12日には、荒御霊を御本殿に迎える大切な神事『御蔭祭』が下鴨神社で執り行われ、そして5月12日の深夜、
上賀茂神社では御阿礼神事(みあれしんじ)が完全非公開で執り行われます。
この二つの神事が滞りなく終わり、あとは5月15日が天候に恵まれることを祈るばかりです。
今回は葵祭にちなんだお菓子のご紹介です。
葵祭の路頭の儀に出てくる乗り物といえば『牛車(ぎっしゃ)』。
御所車と呼ばれ藤の花などを軒に飾り、牛に引かせます。
御所車の車輪(くるまのわ)の焼印を入れて 二色のいら粉でさやさやと揺れ輝く藤の花を表現したお菓子です。
菓銘は、女性が藤の精となり、美しく能を舞う物語【藤】という能の曲名の中に登場する藤の精から名付けられて
います。
薯蕷製のお菓子の中には青色(みどり)に染めたこしあんが包まれており、新緑の葵祭の雰囲気を感じることができ
ます。
優美な姿のお菓子をみなさんも召し上がられてみてはいかがでしょうか。
菓銘藤の精
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2018
516

山法師

京都市内を移動していると、青々とした木々に白い花を咲かせた光景を見かけます。
その花の様子は4枚の花びらでハナミズキとよく似ています。
(正確には、花ではなく、つぼみを包んでいた総苞片(そうほうへん)という葉です。)
その木々を眺めていると
「ハナミズキのように見えるけど、ちょっと違うわぁ。」
という会話をよく耳にします。
ハナミズキではなく、ヤマボウシ(山法師)という日本の古来種です。
その名前の由来は、白い総苞片を頭巾に見立てたところからきています。
ハナミズキは、日本がワシントンに桜を送ったお返しに送られてきたアメリカ原産木あることは
あまりにも有名な話。
その両者の違いは、ハナミズキは、花が咲いてから葉が芽吹き始めますが、ヤマボウシは葉が
成長したのちに花が咲きます。
ハナミズキの総苞片は丸みがあるのに対して、ヤマボウシの総苞片は先端が尖っています。
今回は、そのヤマボウシにちなんだお菓子をご紹介します。
京都市内で身近に見かけるヤマボウシ。
しかしながら、その意匠のお菓子をあまり見かけることはありません。
ハナミズキのような派手さはなく、落ち着いた雰囲気のヤマボウシは、お菓子の題材としては
とてもいいのではと個人的に感じています。
ヤマボウシの特徴を上手く捉えてこなしで表現されているお菓子。
こちらのお菓子を手のひらにのせて愛でていると不思議と青々とした葉までも感じることができます。
菓銘山法師
店名鍵善良房
住所京都市東山区祇園町北側264番地
電話(075)561-1818
2018
523

のどか

バラの花がご家庭の庭先や玄関先で綺麗に咲いている様子を見かけるようになってきました。
つい気品溢れるその様子にうっとりと見惚れてしまいます。
個人的には淡いピンク色のイングリッシュローズが大好きです。
どうしてもバラといえば、真っ白な壁の洋館で紅茶をいただきながら眺めるというイメージが強くあります。
『バラは海外からやってきたもの。』と思ってしまいますが、実はノイバラやハマナスという原種バラが日本には自生しています。
奈良時代、万葉集でバラの意味とされる『茨(うばら)』が詠みこまれています。
その後も源氏物語や古今和歌集の中にも登場しています。
当時のバラの絵は現存しておらずどのような様子かは定かではありません。
きっと気品溢れる優雅な雰囲気というよりは、日本らしく控えめで可憐な花だったのではないでしょうか。
今回は、そのバラにちなんだお菓子をご紹介します。
外郎で模ったバラのお菓子。
手数をかけずに作られているにもかかわらず気品と優雅さを感じ、幸せな気分となります。
菓銘には、花の品種名ではなく、バラの花を見た人々の心情が名付けられています。
職人さんの人柄を感じることができるお菓子です。
菓銘のどか
店名茶寮・宝泉
住所京都市左京区下鴨西高木町25
電話(075)712-1270
2018
530

甘い水

5月も残すところわずか。
5月下旬に入り、カラッとした空気から少し湿度を含む空気へと変わってきたように感じます。
その気候を待っていたかのように疏水や禊川などでは、ホタルが仄かなあかりを灯しています。
何とも言えない安らぎと癒しを与えてくれる不思議な情景です。
『夏は、夜。月の頃はさらなり。闇もなほ。螢の多く飛び違ひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。』
と清少納言が枕草子で綴っています。
今も昔も変わらない優しいホタルのあかり。
そのあかりに寄せる人々の思いが、いつまでも不変であることを切に願って今回のお菓子をご紹介させて
いただきます。
清らかな川の水を葛で涼し気に表現して外郎で包んでいます。
手のひらにのせて愛でていると川のせせらぎが聴こえてきそうなこの時期ならではのお菓子です。
菓銘甘い水
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2018
66

さくらんぼ

水無月となり、紫陽花や雨にまつわる話題が何かと多くなる時期です。
その話題にちなんだお菓子のご紹介はまたの機会にさせていただきます。

今回は、毎年この時期に楽しみにしているお菓子をご紹介させていただきます。
京都市内の果物店には、国内産の見た目にも美しい『佐藤錦(さとうにしき)』や『豊錦(ゆたかにしき)』といった品種のさくらんぼが店頭に並びはじめています。
商品に付けられている価格にびっくりされる方も多いのではないでしょうか。
『赤い宝石』などと表現されることにも納得です。
そのさくらんぼを表現した外郎製のお菓子です。
京菓子の特徴である抽象的な意匠というよりは、どちらかと言えば写実的。
色使いの妙で品を感じる愛らしいさくらんぼを表現しているところはまさに京菓子の神髄ではないでしょうか。

今月いっぱいまで販売されるそうです。
ぜひ、手のひらで可愛らしいさくらんぼを愛でてみてください。
菓銘さくらんぼ
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
2018
613

四葩

先週、梅雨入りの発表があった京都市内。
この時期らしいしっとりとした情景を楽しむことができるので、待ちに待ったと喜んでいらっしゃる京都好きの方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、近年は大雨が降ることも珍しくなくなってきました。
今年は、何事もなく、天からの恵みが大地へと届くことをただただ祈るばかりです。

梅雨といえば紫陽花を真っ先にイメージしてしまうのは私だけではないと思います。
日本人にとって紫陽花は身近な存在のように感じます。
『四葩』、『七変化』、『八仙花』、『手鞠花』など数多くの異名があることからも日本人が紫陽花に寄せる想いをうかがい知ることができます。

この時期、和菓子屋では紫陽花にちなんだお菓子を数多く見かけます。
今回、ご紹介させていただくお店は京菓子らしい抽象的な意匠が店頭に並ぶお店として有名な和菓子店です。
そのお店のご主人が、「うちの店のお菓子の中では、どちらかと言えば写実的なお菓子です。」と語られたお菓子がこちらです。
紫陽花のお菓子の代表的な意匠として、餡を錦玉で包んだお菓子やきんとんに錦玉をあしらい雨に濡れた紫陽花に見立てたお菓子があります。
それらのお菓子は、紫陽花の雰囲気を感じとってもらえる京菓子らしい抽象的な意匠です。
一方で今回のお菓子は、紫陽花の花びらをクローズアップして羽二重で表現したお菓子です。
写実的と言っても、こなしのようなもので成形をしているお菓子とは異なり、羽二重のやわらかい雰囲気がお菓子を抽象的な意匠へと仕上げてくれています。

真夏になると暫くの間、羽二重製のお菓子は店頭から姿を消します。
その前に、一度召し上がって真夏を迎えてみてはいかがでしょうか。
菓銘四葩
店名塩芳軒
住所京都市上京区黒門通中立売上ル飛騨殿町180
電話(075)441-0803
2018
620

露の華

梅雨の中休みとなった先日の週末の京都市内。
光のシャワーが降り注ぐ天候は私たちにとってはとても喜ばしいことです。
可憐に咲く紫陽花たちの様子はどこか悲しげ。
雨に濡れた紫陽花は、花の色が鮮やかに映り、とても風情を感じます。
今回は、そのような情景を表現したお菓子をご紹介します。
紫陽花の花の色『ピンク』、『青』、『白』を餡で表現して、葛で雨に濡れた紫陽花の様子に仕上げているお菓子です。
葛製のお菓子から本格的な京都の夏の訪れをひと足早く感じてみてはいかがでしょうか。
菓銘露の華
店名茶菓 えん寿
住所京都市右京区太秦多藪町14-93
電話(075)432-7564
2018
627

水無月

早いもので一年の折り返しが近づいてきました。
皆さんにとって、この半年間はどのような月日となったことでしょうか。
私のこの半年間は、昨年以上に和菓子を口にする機会が増えた日々となりました。
そして、この6月は様々なお店の水無月を数多くいただいている幸せな時間を過ごしています。
和菓子店にお行儀良く並んでいる三角形のお菓子を見かけるとついつい買い求めてしまいます。
近年では水無月の存在が他府県の方々に多く知れわたり、和菓子店には水無月を求めて観光客がお越しになることが増えてきているそうです。
今回は、京都に暮らす人々にとっては、この時期の特別なお菓子である水無月をご紹介させていただきます。
京都で暮らす人々にとっては元旦の次に欠かせない特別な一日である6月30日。
この日は、この半年の罪のけがれを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事『夏越祓(なごしのはらえ)』が各神社で行われます。
神社境内に飾られた茅(ちがや)を束ねて作られた大きな輪を『水無月の夏越しの祓する人はちとせの命のぶというなり』と唱えながらくぐる『茅の輪くぐり』。
茅の輪をくぐり抜けると、夏の疫病や災厄から免れるといわれています。
その『夏越祓』にいただくのが『水無月』という和菓子です。
小豆には邪気払いの意味があり、外郎で模られた三角の形は暑気を払う氷を表しているといわれています。
その昔、旧暦の6月1日は『氷の節句』といわれ、室町時代には幕府や宮中で年中行事とされていました。
『氷室(ひむろ)』(現在の北区西賀茂地区)で冬に製造して貯蔵させていた氷を御所に取り寄せて口にして暑気払いを行ったそうです。
しかし、庶民にとっては夏の水はとても貴重。
それ以上に貴重だったのが氷。
そこで、氷をかたどったお菓子が作られるようになりました。
それが水無月の始まりだと言われています。
こちらのお店では、小豆の選別を行い、炊き上げた小豆を砂糖で密漬けを行い、艶やかなふっくらとしたものを使用しています。
「見た目がきれいになるように丁寧に小豆を並べています。」と語られるご主人。
その言葉通り、こしのある外郎(ういろう)地に乗っている艶やかな小豆たち。
小豆好きの方々にとっては、見ているだけで幸せな気分になるのではないでしょうか。
6月30日は、水無月を召し上がって邪気払いと暑気払いを行って、素晴らしい半年をお過ごしください。
菓銘水無月
店名笹屋春信
住所京都市西京区桂乾町66-1
電話(075)391-4607
2018
74

鉾餅

7月に入り四条烏丸界隈から祇園八坂神社にかけての一帯では、祇園祭の雰囲気を色濃く感じられるようになってきました。
祇園祭は山鉾巡行だけではなく、7月1日より始まり7月31日までの一ヶ月間にわたり様々な神事が執り行われます。
八坂神社の御神紋であり、祇園祭の象徴として扱われる紋『左三つ巴』と『五瓜に唐花』を至るところで見かけるこの時期。
そして、祇園囃子が「コンチキチン」と鳴り響きます。

一年を通じて囃子方(はやしかた)が行ってきた練習。
四条烏丸界隈で暮らしていると、その祇園囃子がどこからともなく聞こえてきます。
同じ祇園囃子でも、7月に聞こえてくる祇園囃子はやはり格別です。
蒸し暑い京都の夏には祇園囃子は欠かせません。

祇園祭が行われる界隈で営む和菓子店にも祇園祭にちなんだお菓子が並びはじめました。
今回は、そのお菓子の一つをご紹介させていただきます。
数多くある祇園祭にちなんだお菓子ですが、鉾にちなんだお菓子は私が知る限りでは意外にも数えるほどしかありません。

7月17日に行われる山鉾巡行・前祭で先頭をつとめる長刀鉾。
その長刀鉾の『あみ隠し』を模ったのが今回のお菓子です。
お菓子を立たせることにより立体的な意匠となっています。
10年ほど前より販売を始めたお菓子ですが、今ではこの時期の代表的なお菓子の一つとして多くの方が買い求められます。
「仕上がりが美しくなるように、焼皮に焦げ目がつかないように焼いています。」と語るご主人。

もっちりとした焼皮は癖になる食感。
その焼皮でピンク色の白味噌餡を包んでいます。
白味噌餡が苦手な方はご安心ください。
近年、白味噌餡が苦手な方のために、つぶあん入りのお菓子の販売も始まりました。
こちらのお菓子を愛でながら、祇園囃子が鳴り響く中、勇壮に進む長刀鉾の姿を思い浮かべてみてはいかがでしょうか。
菓銘鉾餅
店名鍵甚良房
住所京都市東山区大和大路通四条下ル小松町140
電話(075)561-4180
2018
711

鉾巡り

祇園祭・前祭の山鉾建てが始まった四条烏丸界隈。
釘を一切使用せず木と縄だけで大きな鉾を組み上げていきます。
昔より受け継がれてきた『縄がらみ』と呼ばれる伝統的な技法です。
明日からは、鉾の曳き初めが始まり、四条烏丸界隈は一気に活気づくことでしょう。

真っ赤に染まる西の空を背景に曳き初めを終えた鉾が立ち並ぶ四条烏丸。
その光景を楽しみにして一年を過ごしてきたと言っても過言ではありません。
再開発が進む京都市内。
街の風景が変わろうとも、古来より脈々と受け継がれてきた祇園祭に関わる人々の想いは変わることはありません。
きっと、勇壮な鉾の姿からその想いを感じることでしょう。

今回は祇園祭にちなんだお菓子をご紹介します。
日がくれて駒形提灯に灯が灯り、祇園囃子に誘われるように四条烏丸界隈を夕涼み。
鉾を巡りながら、貴重な文化財を身近に感じる贅沢なひと時。
鉾からは囃子方が演奏する祇園囃子が流れ、山では浴衣姿の子供たちが、ちまき売りのわらべ歌を元気よく歌います。
駒形提灯がゆらめく夜。
美しい鉾の姿を表現した外郎製のお菓子です。
菓銘鉾巡り
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
2018
718

巡行

連日、記録的な暑さが続く京都市内。
そんな中、始まった祇園祭・前祭。
例年であれば、宵山期間中に夕立が降り、雷鳴がとどろく天候となるのですが、今年はどうも様子が違います。
宵山期間中に一度も雨が降ることなく終えました。
「今年は、夕立が降りませんなぁ。いつもやったら、宵山に激しい雨が降って梅雨明けやのに。
早うに梅雨明けしてしもたから、どうも感覚が狂いますなぁ。」
京都で長年暮らす人々との会話の中にもそのような話題が出てきます。

そして昨日、夏空の下で行われました前祭の山鉾巡行。
今年も、多くの観光客が集まり沿道を埋め尽くしました。
鉾が方向転換する『辻回し』では、水をかけられた青竹の上を鉾が滑って動く度に沸く歓声。
きっと、今も昔も変わらない光景なのでしょう。
その後、夕刻よりはじまった神幸祭。
八坂神社から出てきた中御座、東御座、西御座の3基の神輿。
「ほいっと!ほいっと!」という掛け声と共に氏子地域を勇ましく進んでいきます。
四条御旅所に入り、鎮座された3基の神輿は7月24日まで祀られます。

今回は山鉾巡行にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
夏空の下、じりじりと照りつける陽射し。
そして、蝉しぐれが鳴り響く中、豪華な懸装品で彩られた山鉾がゆっくりと進んでいきます。
その様子を『きんとん』と『こなし』で表現したお菓子です。
こちらのお菓子のように後祭の山鉾巡行も青空の下で行われるといいですね。
菓銘巡行
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2018
725

水面(みなも)

祇園祭一色となっている四条烏丸界隈から祇園・八坂神社一帯ですが、後祭の山鉾巡行、還幸祭を終えて残すところ
あとわずかとなりました。
ニュースで連日のように報道されています今年の酷暑。
みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

『京都の夏は暑い!』とよく表現されますが、暑い夏の京都を乗り切るための一つが土用の丑の日の『鰻』。
こちらは京都だけに限らず、みなさんご存知の全国的な習わしです。
そして、今年は土用の丑の日から下鴨神社で始まった『みたらし祭』。

『足つけ神事』とも呼ばれ、毎年、土用の丑の頃に行われる、平安時代より続く京都の夏の神事です。
境内の御手洗池に足を膝まで浸しながらロウソクを供えます。
その後、『鴨のくぼて』と呼ばれている茶碗に注がれたご神水を飲み干すと無病息災が叶うとされています。

今回はその『みたらし祭』にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
下鴨神社と縁があるこちらのお店が作られている御手洗池の水面をイメージしたお菓子。

鎌倉時代より言い伝えられている御手洗池の水泡。
『みたらし団子』は、その水泡を模して作られたと伝わります。
錦玉羹の中に泡に見立てた白あんを入れて、錦玉羹に観世水の文様を入れて水面を表現しています。
「こちらのお菓子は、御手洗池の水面をイメージして作っていますが、御手洗池をご存知ない方もいらっしゃるので、固有名詞ではなく抽象的な菓銘にさせてもろてます。」
と語る職人さん。
御手洗池をご存知な方も、ご存知でない方も、この時期らしいお菓子で涼をとってみてはいかがでしょうか。
菓銘水面(みなも)
店名茶寮・宝泉
住所京都市左京区下鴨西高木町25
電話(075)712-1270
2018
81

天の川

疫神社夏越祭を終え、一ヶ月にわたって行われた祇園祭が今年も終わりました。
8月の京都市内も神事やイベントが数多く行われます。
8月は、旧暦の七夕にあたる時期です。

今年も『京の七夕』が行われます。
今年で9回目を迎えるイベントは京都の夏の風物詩として定着しました。
主会場の『堀川エリア』、『鴨川エリア』をはじめ『梅小路エリア』、『岡崎エリア』、『北野紙屋川エリア』の5会場からなるイベントです。
本日8月1日から堀川エリアの一環として他の会場よりもひと足はやく、世界遺産の二条城ではライトアップが始まります。
今年は『妖怪たちの七夕』をテーマに二之丸庭園のライトアップ、二之丸御殿(大広間)でのプロジェクションマッピングなどが行われます。
果たしてどのような雰囲気の二条城となるのか興味津々です。
また、8月4日より始まる堀川遊歩道のライトアップでは、毎年恒例の『光の天の川』に代わり『ほたるの散歩路』が行われます。

様々な新たな演出で行われる『京の七夕』。
今年はどのような素敵な夏の夜を届けてくれるのか今から楽しみです。

今回は『京の七夕』にちなみ七夕の意匠のお菓子をご紹介させていただきます。
夜空に見える天の川。
ロマンチックな印象に仕上げた葛製のお菓子です。
天の川は年中見ることが可能ですが、特に綺麗に見えるのが8月のこの時期です。
しかも月明りがない新月の夜空が最適だと言われています。
今年は8月11日が新月となります。
お菓子をいただきながら夏の夜空を見上げるのもいいかもしれませんね。
菓銘天の川
店名二條若狭屋
住所京都市中京区二条通小川東入る西大黒町333-2
電話(075)231-0616

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