月刊京都連載 和菓子歳時記
2019
26

下萌

節分を終えて、暦の上では『立春』。
まだ寒い日が続いていますが、一足早く小さな春を探しに出かけてみませんか。

京都市内を散策しているとあぜ道でフキノトウが芽吹いている様子を見かけるようになってきました。
これからは、ツクシやゼンマイも芽吹き、本格的な春の訪れが近づいてきたことを知らせてくれることでしょう。
今回は、冬から春へ、季節の移ろいを表現したお菓子のご紹介です。

立春を迎えたこの時期、和菓子屋では『下萌え』と名づけられたお菓子を見かけます。
やわらかな春の日差しを浴びた雪解けの大地。
厳しい冬を耐え、新しい命が芽吹いた情景を表現したお菓子です。
多忙な毎日を過ごしていると気づくことができない小さな春の訪れ。
よもぎあんを外郎で包んだお菓子が私たちに春の兆しを知らせてくれます。
菓銘下萌
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
2019
213

椿餅

春の訪れを感じる暖かい日になったかと思えば、真冬の寒さとなり、とても寒暖差の激しい近ごろの天候。
いかがお過ごしでしょうか。
体調にはくれぐれもお気をつけください。
この寒暖差が、どのような影響を植物たちに与えているのかが気になるところです。

先日の春本番を思わせるような暖かい気候で、一条戻橋のたもとに植えられている河津桜の蕾が一段と膨らみました。
日に日に膨らんでゆく桜の蕾に心を躍らせています。

この時期、私がみなさんにぜひ知っていただきたい『椿餅』というお菓子があります。
茶道をたしなむ方、日頃より和菓子にご興味をお持ちの方にとっては、とても馴染みのあるお菓子です。
年に数回しか和菓子を食べないという方には、あまり馴染みのあるお菓子ではないかもしれません。

餡を道明寺で包んで椿の葉を挟んだだけのとても素朴な意匠のお菓子ですが、とても歴史の古いお菓子です。
その歴史は平安時代まで遡り源氏物語『第34帖・若菜上』の中で、
『椿い餅、梨、柑子やうのものども、様々に筥の蓋どもにとりまぜつつあるを、若きひとびと、そぼれとり食ふ』
と若い人々が蹴鞠のあとの宴で食べる場面が登場します。
『椿餅』は日本最古の餅菓子と伝えられています。

椿は、文字通り古くから『春』を代表する木。
また、その椿の名の由来は、『厚葉木(あつばき)』または『艶葉木(つやばき)』からきたとされています。
艶やかな肉厚の葉が特徴的な椿。
椿餅は葉を食べるのではなく、葉を愛でるお菓子です。
椿餅から春を感じてみてはいかがでしょうか。
菓銘椿餅
店名老松(北野店)
住所京都市上京区北野上七軒
電話(075)463-3050
2019
220

北野の春

ぐっと冷え込んだ気温の日が続いていましたが、ようやく寒さが和らぎ春へ。
いよいよ、春を呼ぶ北野天満宮『梅花祭』が近づいてきました。
ご祭神の菅原道真公の祥月命日である2月25日に梅を愛した道真公を偲んで『梅花祭』が行われます。
今年は梅の開花が進み、境内には甘い香りが漂っています。
きっと、見頃の中で行われる『梅花祭』となることでしょう。

梅、桜、そして北野をどり。
これから北野界隈に春を求めて多くの方が訪れます。
今回のお菓子は、その春を象徴する色で北野の春を表現しています。
つくね芋の独特な風味を味わっていただけるお菓子です。
菓銘北野の春
店名笹屋守栄
住所京都市北区衣笠天神森町38
電話(075)463-0338
2019
227

雛ごろも

今月も残すところあとわずかとなってきました。
次の日曜日(3月3日)は、雛祭りとして親しまれている『上巳の節句』となります。
別名『桃の節句』とも呼ばれ、うららかな春の訪れにふさわしい行事です。

例年、桃の花が見頃となるのは、一ヶ月遅れた桜の開花の頃となります。
京都では、旧暦にならい、一ヶ月遅れて4月3日に行なわれるご家庭が多くあります。
まさに『桃の節句』と呼ばれるのにふさわしい風景の中で行われることになります。

今回は、その節句にちなんだお菓子のご紹介です。
お雛様の優美な着物をイメージした、こなし製のお菓子です。
目の前に出てきたお菓子を見て、満面の笑みで喜ぶお嬢さまの光景が目に浮かんできます。
こちらのお菓子とともに幸せなひと時をお過ごしください。
菓銘雛ごろも
店名鶴屋吉信
住所京都市上京区今出川通堀川西入
電話(075)441-0105
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