月刊京都連載 和菓子歳時記
2019
51

こいのぼり

新しい時代の幕開けです。
果たして、どのような時代となることでしょう。
近年は、目まぐるしいほどに文明が発展を遂げていますが、それについていくのが「やっと」といった感じです。
ニュースでもAIの話題が数多く採り上げられます。
ここから先は、想像もできないような時代となるのかと思うと少し心配になります。
便利であっても、とても無機質な世界。
そのような時代だからこそ、私たちは、今まで以上に人だけではなく、動物や植物などに対して思いやりをもって接していかなくてはならないのではないでしょうか。
次世代を担う子供たちに、大人たちは、言葉ではなく、暮らしぶりで伝えていく必要があるのではと感じています。
幼少の頃から、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に和菓子を食べた時間。
和菓子を介して多くのことを教えてもらいました。
青空を気持ちよさそうに泳ぐ鯉のぼりを見ると、柏餅を食べながら教えてもらったあの頃を思い出します。
5月5日は、『端午の節句』。
この日に鯉のぼりを立てるようになったのは、中国の故事に由来します。
黄河の急流にある竜門と呼ばれる滝を多くの魚が登ろうと試みまます。
その中で、鯉のみが登りきり、竜になることができたという話にちなんで鯉の滝登りが立身出世の象徴となりました。
「鯉のように滝を登って立派な大人になるんやで!」
と話かけてくれた祖母の言葉が思い出されます。
今年初めて販売される、こちらのお菓子は、こいのぼり(鯉)を表現しています。
鯉の頭部が無いと思われる方がいらっしゃるかも知れません。
その理由は、お菓子はあくまで口に入れるものなのでリアル過ぎて食が進まないようにならない為にだそうです。
頭部が無くても、躍動感溢れる姿を感じ取ることができるのではないでしょうか。
この時期にご家族で召し上がってみてはいかがでしょうか。
きっと、お子様の心に残る思い出となることだと思います。
菓銘こいのぼり
店名亀屋良長
住所京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19
電話(075)221-2005
2019
58

宮中の儀

新緑の5月。
京都の5月といえば、やはり『葵祭』。
平安時代より国家的行事として受け継がれている勅祭です。
5月1日の『競馬会足汰式(くらべまえあしぞろえしき)』、その後、『流鏑馬神事』、『斎王代禊の儀』、『歩射神事』、『賀茂競馬』と葵祭の前儀が行われました。
そして、次の日曜日(5月12日)には、荒御霊を御本殿に迎える大切な神事『御蔭祭』が下鴨神社で執り行われます。
その深夜には、上賀茂神社では御阿礼神事(みあれしんじ)が完全非公開で執り行われます。
この二つの神事が滞りなく終わると、あとは5月15日が天候に恵まれることを祈るばかりです。
5月15日に行われる祭儀は、本来『宮中の儀』、『路頭の儀』、『社頭の儀』の三つから成り立っています。
現在は、御所に天皇不在の為『宮中の儀』は執り行われておりません。
しかしながら現在も勅使がお見えになり『路頭の儀』、『社頭の儀』が執り行われています。
葵祭の路頭の儀に出てくる乗り物といえば『牛車(ぎっしゃ)』。
御所車と呼ばれ藤の花などを軒に飾り牛に引かせます。
そして、ふたば葵と桂の枝葉を組み合わせて作られた『葵桂』を装飾した行列が新緑の京都市内を進みます。
葵祭の象徴的な二色でつくられたこなしに、御所車の車輪(くるまのわ)をすり込んだお菓子です。
平安時代の優雅な雰囲気を感じられるお菓子です。
菓銘宮中の儀
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2019
515

一声

日中は初夏らしい陽射しが降り注ぐようになってきた京都市内です。
ツツジがあちらこちらで鮮やかな花を咲かせて街を彩っています。
個人的には、ツツジが咲くこの時期が一年で最も華やかなのではないかと思っています。

春の訪れを告げる鶯の鳴き声。
そして、夏の訪れを告げるホトトギスの鳴き声。
ともに季節の初めに聞く鳴き声として『初音(はつね)』と呼ばれてきました。
ホトトギスは、初夏のこの時期に季節を感じる鳥として古来より親しまれてきました。

今回は、ホトトギスにちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
ホトトギスは夜に鳴く鳥とされています。
『一声(いっせい)は月が啼(な)いたか時鳥(ホトトギス)』という出だしではじまる小唄があります。
三日月を羽二重餅、月を横切るホトトギスを大徳寺納豆で表現しています。
耳をすませば、夏の訪れを告げるホトトギスの鳴き声が聞こえてきそうなお菓子です。
菓銘一声
店名紫野源水
住所京都市北区小山西大野町78-1
電話(075)451-8857
2019
522

一雫

葵祭が無事に終わり、5月も残すところ10日ほどとなりました。
このところ挨拶の後に話題となるのが梅雨入りの時期。
今年の梅雨入りは、いつとなることでしょうか。
梅雨と言えば紫陽花。
紫陽花の花が開くのは、まだ少しあとになりそうですが、ヤマアジサイの変種である甘茶(アマチャ)の花が咲きはじめてきました。
甘茶の寺として有名な建仁寺の塔頭・霊源院では、甘茶の庭『甘露庭』の一般公開が5月18日(土)より始まっています。
新緑にそっと寄り添うように彩る可憐な甘茶の花。
禅寺にふさわしい光景が庭園に広がります。

今回は、その甘茶の花をモチーフにしたお菓子をご紹介させていただきます。
雨音が心地よい日なか。
可憐な甘茶の花へゆっくりと落ちる一雫(ひとしずく)。
そのような情景を表現した上用製のお菓子です。
菓銘一雫
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
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