月刊京都連載 和菓子歳時記
2019
65

紫陽花

水無月となり、京都の社寺にある紫陽花(あじさい)園の公開が始まりました。
近年は、カメラを片手に多くの方が紫陽花園に足を運ぶようになってきました。
紫陽花の魅力は、なんと言ってその姿。
丸く小さな花の周りを花びらのように見える四片の萼(がく)が取り囲み集まり、可愛らしい手毬(てまり)を形作っています。
梅雨でつい気分が沈みがちになるこの時期。
私たちの心を癒してくれる紫陽花は、その様子から洋花のイメージが強いですが、実は奈良時代には存在していました。
万葉集の中に紫陽花を詠んだ歌が残っています。

『あぢさゐの 八重咲くごとく やつ代にを いませ我が背子 見つつ偲はむ(橘諸兄)』

今回は、紫陽花にちなんだ意匠のお菓子をご紹介させていただきます。
餡玉の周りに采の目に切った錦玉羹で包み、雨に濡れた瑞々しい紫陽花の花を表現したお菓子です。
雨音を聞きながら、この時期ならではのお菓子をいただく幸せな時間。
みなさんもいかがでしょうか。
菓銘紫陽花
店名茶寮 宝泉
住所京都市左京区下鴨西高木町25
電話(075)712-1270
2019
612

沙羅の花

二十四節気では『芒種(ぼうしゅ)』となり、本格的な雨の季節です。
雨が京都の町並みを風情あるものに変えてくれます。
特別な場所に出かけなくても、雨音を聴きながら濡れた紫陽花を眺めているだけで心が癒されるこの時期。
でも、やっぱりどこかにお出かけしたいという方は、沙羅双樹(ナツツバキ)を見に行ってみてはいかがでしょうか。
沙羅双樹は、インド等の熱帯に育つ樹木です。
日本では自生することができない為に、ナツツバキを沙羅双樹に見立てています。

妙心寺の塔頭寺院の一つである東林院では、今週末(6月15日)より毎年恒例の『沙羅の花を愛でる会』が始まります。
朝に咲いて夕方に落花する一日花の沙羅双樹。
その儚さから無常を感じて、自身の人生ついて思いを巡らせるきっかけを与えてくれます。
雨露に濡れた苔の上に落ちた白い花を眺めながら思いにふけてみてはいかがでしょうか。

今回は、沙羅双樹にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
沙羅の花を模った、こなし製のお菓子です。
京都では、東林院の他、法金剛院、鹿王院、真如堂などで見かけることができる沙羅双樹です。
この時期ならではの花ですが、和菓子として意匠化されることは少なく、あまり見かけることがありません。
今回のお菓子は、通常販売されているわけではなく、特別に作っていただいたものです。
沙羅双樹のお菓子を手のひらで愛でながら、自身の人生ついて思いを巡らせるひと時もいいものです。
菓銘沙羅の花
店名亀屋重久
住所京都市右京区谷口梅津間町
電話(075)461-7365
2019
619

半夏生

6月も早いもので終盤へとさしかかろうとしていますが、京都市内では紫陽花が本格的な見頃を迎えています。
一方で池の水面には、睡蓮の花が咲き始めています。
また、池の周囲では半夏生の葉がすくすくと育ち、爽やかな緑色の葉が少しずつ白くなってきています。
植物たちは、気候の変化を敏感に感じとり、私たちに季節の移ろいを教えてくれます。

半夏生といえば、建仁寺の塔頭である『両足院』が有名ですが、ただいま初夏の特別公開が行われています。
この時期から7月の初旬にかけて、葉が化粧をしたように白くなり、また緑色の葉に戻る半夏生。
その様子から半化粧と呼ばれ、転じて半夏生となりました。
緑と白のコントラストが池をさらに清涼感のある様子に変えてくれます。

今回は、その半夏生にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
涼し気な吉野羹をよく見ると半夏生をイメージした白色と緑色。
水辺で成長して夏の水辺を彩る半夏生の様子を思い浮かべてしまう清涼感あるお菓子です。
菓銘半夏生
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2019
626

水無月

6月も残すところあとわずかとなってきました。
京都で暮らす人々にとって元旦の次に欠かせない特別な一日が近づいてきました。
6月30日は、半年の罪のケガレを祓い、残り半年の無病息災を祈願する神事『夏越の祓(なごしのはらえ)』が各神社で行われます。
「水無月の夏越の祓する人は ちとせの命のぶというなり」と唱えながら、茅(ちがや)を束ねて作られた大きな茅の輪をくぐる『茅の輪くぐり』を行います。
茅の輪をくぐり抜けると、夏の疫病や災厄から免れるといわれています。
また神社によっては、人形に半年間の災い事を託し小川に流す『人形(ひとがた)流し』が行われるところもあります。
世界文化遺産『上賀茂神社』でも人形流しが行われます。
和紙で模られた人形に名前と年齢を記入します。
闇夜の中、篝火に照らされた、ならの小川に神職が人形を流します。

『風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ 夏の しるしなりける(藤原家隆・百人一首)』

こちらの和歌は、上賀茂神社の夏越の祓の情景を詠んだものとされています。
境内には、既に茅の輪が設置されており、一足早く茅の輪くぐりをすることができます。
また、人形流しの申し込みも受付けが始まっています。

今回は、夏越の祓にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
小豆には邪気払いの意味があり、外郎で模られた三角の形は暑気を払う氷を表しているといわれている和菓子です。
今や全国的な和菓子となりつつありますが、水無月を語る上で京都を外して語ることはできません。
室町時代には幕府や宮中で旧暦の6月1日に『氷の節句』が年中行事として行われていました。
『氷室(ひむろ)』(現在の北区西賀茂地区)で冬に製造して貯蔵させていた氷を御所に取り寄せて口にして暑気払いを行います。
庶民にとっては、夏の水はとても貴重であり、それ以上に貴重だったのが氷です。
そこで、氷をかたどった水無月が作られるようになりました。
こちらのお店では、一般的な白と青えんどう豆をのせた抹茶味の水無月も販売されています。
みなさん、残り半年も無事にお過ごしくださいね。
菓銘水無月
店名御菓子司 霜月
住所京都市北区西賀茂榿ノ木町5
電話(075)491-5556
prev前月 次月next

きょうの和菓子の玉手箱きょうの和菓子の玉手箱

きょうのお菓子

月刊京都連載
和菓子歳時記

スマートフォン、タブレットを縦にしてご覧ください。