月刊京都連載 和菓子歳時記
2019
12

元朝

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。

2019年の幕開けです。
京都市内の旧家などには『根引き松』が飾られ、京都の新年らしい風景を見ることができます。
平成最後のお正月ということで例年になく、感慨深く迎えた新年です。
みなさんはどのような想いで新年を迎えられたことでしょうか。
今回は賀正菓子をご紹介させていただきます。

賀正菓子とは文字通りに初春を寿ぐ華やかな、おめでたい意匠のお菓子たちのことです。
今回のお菓子の銘である『元朝』とは、元日の朝のことを意味します。
すなわち元旦のことです。

この元旦の『旦』の字は、地平線より太陽が昇る様子を表現した漢字であるとされています。
初日の出と共に年神様が現れるとされている一年で最も大切な瞬間を銘にしたお菓子です。
おめでたいお菓子で縁起を担いで一年のはじまりを過ごしてみてはいかがでしょうか。
2019年が皆様にとって佳き年となりますように心より祈っております。
菓銘元朝
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2019
19

えびす焼

年が明けて人日の節句を終えて、今年も賑やかに『十日ゑびす大祭(初ゑびす)』がはじまりました。
例年、京都ゑびす神社には、昼夜を問わず商売繁盛を祈願する参拝者で賑わいます。
明日(1月10日)と明後日(1月11日)は東映の女優さんや祇園町と宮川町の舞妓さんによる福笹の授与が行われます。
京都ならではの華やいだ雰囲気は新年にふさわしく、幸せな気分となります。

今では、十日ゑびす大祭に欠かすことができない福笹。
この福笹は、江戸時代に京都ゑびす神社がはじめたものが全国に広まったものです。
笹は弾力があって折れにくく、節目正しく、葉は常に青々としており、真っ直ぐと伸びて成長し続けます。
このようなことが縁起物として人々に受け入れられて広まっていきました。

今回は、京都ゑびす神社からほど近くで営む和菓子店が販売するえびす様にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
京都ゑびす神社前に立ち並ぶ露店の数々。
その中に混じって、店頭でこちらのお菓子を実演販売されています。
十日ゑびす大祭に足を運ばれた方の多くは目にされているのではないでしょうか。

例年、多くの方が買い求めるこちらのお菓子は、飾らない素朴な雰囲気が特徴的で老若男女を問わず
親しみやすいお味です。
1月11日までの販売となっております。
売り切れ次第終了となりますのでご注意ください。
(例年、昼過ぎには売り切れとなるそうです。)
えびす焼を食べて縁起を担いでみてはいかがでしょうか。
菓銘えびす焼
店名鍵甚良房
住所京都市東山区大和大路通四条下ル小松町140
電話(075)561-4180
2019
116

春の光

1月も半月が経ちました。
暦の上では、小寒から大寒へと移り変わっていく時期。
一年で最も寒さが厳しくなる頃です。
この1月の中旬に恒例の『歌会始(うたかいはじめ)の儀』が皇居・宮殿で開かれます。
今年の開催日は、本日(1月16日)です。

ひとつの共通のお題で歌を詠み、披講する会のことを歌会といいます。
天皇陛下が年の始めの歌会として執り行われる歌御会(うたごかい)が『歌会始』です。
今年(平成三十一年)のお題は、『光』。

京都の和菓子店では、そのお題に合わせて毎年お菓子を作ります。
そのお菓子のことを『勅題菓(ちょくだいか)』または『お題菓子』と呼ぶ祝い菓子です。
新年ならではのこの勅題菓は、明治以降の慣例として今日まで続いてきているものです。
毎年変わる様々なお題に合わせて『意匠』と『菓銘』を考えなくてはならないため、職人さんの豊富な教養と感性が問われます。

今回は、その勅題菓をご紹介させていただきます。
花のいろどり、緑湧き立つ春の風光を表現した外郎製のお菓子です。
お菓子から春の香りを感じてみてはいかがでしょうか。
菓銘春の光
店名游月
住所京都市左京区山端壱町田町8-31
電話(075)711-1110
2019
123

ろう梅

大寒となり冬の厳しさを感じる日々となってきました。
二条川東にある大蓮寺。
夏には境内にところ狭しと置かれている鉢植えの蓮が花開き極楽のような光景を楽しむことができるお寺です。
これからの時期は、ご本堂前に植えられているロウバイが参拝者を楽しませてくれます。

そのロウバイの蕾がほころびはじめてきました。
ロウバイの特徴は、何と言っても黄色の花弁がロウのようであることと、花弁からする甘い高貴な香しい匂いではないでしょうか。
ロウバイを見たことはあるけど匂いを嗅いだことがない方は、花弁に花を近づけてみてください。
きっと、その香しい匂いに驚かれることだと思います。

今回はそのロウバイをモチーフにしたお菓子のご紹介です。
彩りの少ないこの時期の貴重な彩りの一つであるロウバイ。
しかしながら意外にも、ロウバイをモチーフにしたお菓子を、梅や山茶花のようにどこの和菓子屋でも見かける
ようなことはありません。
その理由は、はっきりとわかりませんが、ロウバイをこの時期の楽しみにしている者としては、とても残念です。
こちらのお菓子を目にした時は、探し物をようやく見つけたような幸せな気分になりました。

お店の近くには、ロウバイが一本植えられているそうです。
そのロウバイの可愛らしい様子をお菓子にされたのがこちらのお菓子です。
ロウバイの何とも言えない可愛らしい雰囲気が外郎で表現されています。
ちなみに蝋梅(ろうばい)は名前から梅の一種と思われがちですが、梅はバラ科サクラ属ですが、蝋梅はロウバイ科
ロウバイ属で全く異なります。
冬のやわらかい日差しを浴びて光り輝くロウバイの美しさをお菓子と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
菓銘ろう梅
店名茶菓 えん寿
住所京都市右京区太秦多藪町14-93
電話(075)432-7564
2019
130

厄払い

早いもので1月も終わりが近づいてきました。
寒い日々が続いていますが大寒もあとわずか。
今週末は節分。
そして、翌日は二十四節気『立春』となります。

立秋から下がりはじめた平均気温が、立春を迎えるとともに上昇へと転じはじめます。
体感として春を感じるような温かさになるのはまだ先ですが、立春を過ぎると動植物は気温の変化を敏感に感じ取り春の兆しを私たちに知らせてくれます。
その立春の前日が『節分』。
文字通りに季節の分かれ目であるその日は、邪気が入りやすいと考えられており、その邪気払いの一つとして豆まきが行われます。

京都では、表鬼門にあたる『吉田神社』、そして、裏鬼門にあたる『壬生寺』が特に有名で多くの参拝者が訪れます。
今回は、壬生寺の隣で営むお店の節分にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
壬生寺と縁が深いこちらのお店のご主人は、幼稚園児の頃より壬生狂言と関わり、この時期に壬生寺で上演される『節分』という演目にご出演されています。
その『節分』の中で演じられる、升に入った豆で赤鬼を追い払う一場面。
馴染みのあるこの一場面で観客は、一足早く春の訪れを感じます。
この演目を見ないと節分の気分にならないと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その升をモチーフにしたお菓子です。
大豆を用いて作られた『きな粉餡』。
その餡を餅皮で包んで升の形に仕上げたお菓子は、無駄を一切省いた伝統を感じる意匠です。
きっと、厄もどこかへ去って行くことでしょう。
口の中いっぱいに広がる大豆の香りに、親しみと懐かしさを感じます。
壬生寺でお参りをした後、こちらのお菓子で日々の厄を払って素敵な日々を過ごされてみてはいかがでしょうか。
菓銘厄払い
店名京都鶴屋
住所京都市中京区壬生梛ノ宮町24
電話(075)841-0751
2019
26

下萌

節分を終えて、暦の上では『立春』。
まだ寒い日が続いていますが、一足早く小さな春を探しに出かけてみませんか。

京都市内を散策しているとあぜ道でフキノトウが芽吹いている様子を見かけるようになってきました。
これからは、ツクシやゼンマイも芽吹き、本格的な春の訪れが近づいてきたことを知らせてくれることでしょう。
今回は、冬から春へ、季節の移ろいを表現したお菓子のご紹介です。

立春を迎えたこの時期、和菓子屋では『下萌え』と名づけられたお菓子を見かけます。
やわらかな春の日差しを浴びた雪解けの大地。
厳しい冬を耐え、新しい命が芽吹いた情景を表現したお菓子です。
多忙な毎日を過ごしていると気づくことができない小さな春の訪れ。
よもぎあんを外郎で包んだお菓子が私たちに春の兆しを知らせてくれます。
菓銘下萌
店名千本玉壽軒
住所京都市上京区千本通今出川上ル
電話(075)461-0796
2019
213

椿餅

春の訪れを感じる暖かい日になったかと思えば、真冬の寒さとなり、とても寒暖差の激しい近ごろの天候。
いかがお過ごしでしょうか。
体調にはくれぐれもお気をつけください。
この寒暖差が、どのような影響を植物たちに与えているのかが気になるところです。

先日の春本番を思わせるような暖かい気候で、一条戻橋のたもとに植えられている河津桜の蕾が一段と膨らみました。
日に日に膨らんでゆく桜の蕾に心を躍らせています。

この時期、私がみなさんにぜひ知っていただきたい『椿餅』というお菓子があります。
茶道をたしなむ方、日頃より和菓子にご興味をお持ちの方にとっては、とても馴染みのあるお菓子です。
年に数回しか和菓子を食べないという方には、あまり馴染みのあるお菓子ではないかもしれません。

餡を道明寺で包んで椿の葉を挟んだだけのとても素朴な意匠のお菓子ですが、とても歴史の古いお菓子です。
その歴史は平安時代まで遡り源氏物語『第34帖・若菜上』の中で、
『椿い餅、梨、柑子やうのものども、様々に筥の蓋どもにとりまぜつつあるを、若きひとびと、そぼれとり食ふ』
と若い人々が蹴鞠のあとの宴で食べる場面が登場します。
『椿餅』は日本最古の餅菓子と伝えられています。

椿は、文字通り古くから『春』を代表する木。
また、その椿の名の由来は、『厚葉木(あつばき)』または『艶葉木(つやばき)』からきたとされています。
艶やかな肉厚の葉が特徴的な椿。
椿餅は葉を食べるのではなく、葉を愛でるお菓子です。
椿餅から春を感じてみてはいかがでしょうか。
菓銘椿餅
店名老松(北野店)
住所京都市上京区北野上七軒
電話(075)463-3050
2019
220

北野の春

ぐっと冷え込んだ気温の日が続いていましたが、ようやく寒さが和らぎ春へ。
いよいよ、春を呼ぶ北野天満宮『梅花祭』が近づいてきました。
ご祭神の菅原道真公の祥月命日である2月25日に梅を愛した道真公を偲んで『梅花祭』が行われます。
今年は梅の開花が進み、境内には甘い香りが漂っています。
きっと、見頃の中で行われる『梅花祭』となることでしょう。

梅、桜、そして北野をどり。
これから北野界隈に春を求めて多くの方が訪れます。
今回のお菓子は、その春を象徴する色で北野の春を表現しています。
つくね芋の独特な風味を味わっていただけるお菓子です。
菓銘北野の春
店名笹屋守栄
住所京都市北区衣笠天神森町38
電話(075)463-0338
2019
227

雛ごろも

今月も残すところあとわずかとなってきました。
次の日曜日(3月3日)は、雛祭りとして親しまれている『上巳の節句』となります。
別名『桃の節句』とも呼ばれ、うららかな春の訪れにふさわしい行事です。

例年、桃の花が見頃となるのは、一ヶ月遅れた桜の開花の頃となります。
京都では、旧暦にならい、一ヶ月遅れて4月3日に行なわれるご家庭が多くあります。
まさに『桃の節句』と呼ばれるのにふさわしい風景の中で行われることになります。

今回は、その節句にちなんだお菓子のご紹介です。
お雛様の優美な着物をイメージした、こなし製のお菓子です。
目の前に出てきたお菓子を見て、満面の笑みで喜ぶお嬢さまの光景が目に浮かんできます。
こちらのお菓子とともに幸せなひと時をお過ごしください。
菓銘雛ごろも
店名鶴屋吉信
住所京都市上京区今出川通堀川西入
電話(075)441-0105
2019
36

桜もち

弥生となって約一週間。
本格的な春の訪れを感じるようになってきました。

本日は二十四節気では、『啓蟄』。
冬眠していた虫たちが春の訪れを感じて穴から出てくる頃です。
予報では今年は寒の戻りはなく、順調に暖かくなっていくそうです。
虫たちにとっても嬉しい知らせですね。

様々な和菓子屋の軒先で『桜餅』の張り紙を見かける時期となってきました。
和菓子にあまり興味を持っていない方でも一度は口にしたことがあるのではないでしょうか。
日本人にとっては、とても慣れ親しんだお菓子の一つである桜餅。
春を味覚からも存分に感じることができるお菓子です。

小麦粉などで生地を焼いた皮で餡を巻き、塩漬けした桜葉で巻いた関東風の『長明寺』。
そして、道明寺粉を使用して餡を包み、その後、塩漬けした桜葉で包んで仕上げた関西風の『道明寺』。
皆さんは、どちらの桜餅がお好みでしょうか。

今回ご紹介させていただくお店では、焼皮製と銘柄米『滋賀羽二重』を使用した生糯米(なまもちごめ)製の二種類の桜もちが販売されています。
口当たりのとても良い特製の『皮むき小豆餡』。
その『皮むき小豆餡』と焼皮製、生糯米製はともに相性抜群です。
とてもあっさりしていて、ついつい手が伸びてしまいます。
機会があればぜひ召し上がていただきたい桜餅です。
菓銘桜もち
店名游月
住所京都市左京区山端壱町田町8-31
電話(075)711-1110
2019
313

初蝶

一条戻橋や三条大橋の袂(たもと)に植えられている河津桜が先週より見頃を迎えています。
裸木の中に一際色鮮やかに咲いている河津桜。
その様子に行きかう人々は、足を止めて写真を撮ったりしながら春の訪れを感じてひと時を過ごされています。

そして、出町柳駅すぐにある長徳寺のオカメ桜の蕾が少しづつほころび始めてきました。
いよいよ、今年もこの季節が目前にまでやってきました。

この本格的な桜シーズンを迎える前に毎年行われているのが『東山花灯路』です。
先週の金曜日(3月8日)より始まっており、日曜日(3月17日)まで行われます。
2003年より始まったこちらのイベントですが、今では京都市民はもとより、観光客にも認知され、この時期の
風物詩として多くの人出で賑わうようになりました。
観光地として名高い東山エリアを行灯の仄かな灯りで足元を照らし、風情ある京都を演出しています。
また、八坂神社で行われる舞妓さんの舞の奉納をはじめとする様々な公演も見どころの一つです。

今回は、この東山花灯路エリアにある和菓子店のお菓子をご紹介させていただきます。
葛切りと菊寿糖で有名なこちらのお店。
本店は八坂神社西楼門から四条通りを西へ歩いて3分ほどのところにありますが、東山花灯路が行われている
エリアに高台寺店があります。

こちらの店頭でも販売されている色鮮やかなお菓子。
その色合いについ目がとまります。
啓蟄となったこの時期に最適な蝶々の焼印を施した外郎製のお菓子です。
東山花灯路に行かれる際に立ち寄って春を感じてみてはいかがでしょうか。
(営業時間は18時までとなっておりますのでご注意ください。)
菓銘初蝶
店名鍵善良房・高台寺店
住所京都市東山区下河原通高台寺表門前上る
電話075-525-0011
2019
320

野遊び

今年は、例年以上の花粉の飛散量となり、花粉症の方にとってはとても大変な時期となっているのではないでしょうか。
他人事ではなく、私も花粉症なので大変です。
花粉のことを考えると一歩も外へ出たくないのが本音ですが、桜の開花が気になり、つい出かけてしまいます。

淀水路沿いの河津桜が満開を迎え、先週は蕾だった出町柳駅すぐにある長徳寺のオカメ桜も見頃となりました。
長徳寺のオカメ桜は、見頃期間が短いため、この記事を目にされている時は、もう散りはじめているかもしれません。
例年であれば、長徳寺のオカメ桜が散り始めると、京都御苑・近衛邸の糸桜の開花が始まり、次々と早咲き桜の開花が始まります。
今年の桜シーズンは、昨年に京都を襲った台風21号の影響でどのようなになるのか心配していましたが順調に蕾が膨らんでいるようです。
花開く桜の様子を見た時は、とても感慨深い気持ちでいっぱいになりそうです。

今回は、桜と春の芽吹きを淡い二色の色合いで表現したお菓子をご紹介させていただきます。
春の香り(蓬)が口の中で広がるお菓子。
春を感じた瞬間、自然と幸せな気分になります。
小さな幸せですが、この幸福感が和菓子の魅力だと感じさせてくれるお菓子です。
菓銘野遊び
店名茶菓 えん寿
住所京都市右京区太秦多藪町14-93
電話(075)432-7564
2019
327

衣手

京都の春を告げる『北野をどり』が上七軒歌舞練場で先日より始まりました。
その上七軒歌舞練場の近くにある平野神社の魁桜が北野をどりの開幕に合わせるかのように花開き、見頃へと向かっています。
昨年、上陸した台風21号によって拝殿の倒壊や桜の倒木など、甚大な被害を受けたこちらの神社。
まだ、その爪痕は残ったままです。
その様子を見る度に、あの時の凄まじい台風の記憶が甦ってきます。

桜好きの私にとっては、特別な思い入れのある神社です。
私だけでなく、きっと、京都の桜が好きな方にとっては思い入れのある神社ではないでしょうか。
これから平野神社へお花見にお出かけの際には、お賽銭はもちろんのこと、お守りなどを授与してもらっていただき少しでも復興にご協力していただければと思います。
また、毎月定期的に復興コンサートやチャリティーヨガが催されていますので、そちらにもご興味をもっていただければ幸いです。
みなさんのご協力によって、一日も早い復興を願うばかりです。

昨日の3月26日から七十二候では『桜始開(さくらはじめてひらく)』です。
文字通り、桜の花が咲き始める頃です。
今回は桜にちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
着物の袖を意味する『衣手』は、よく和歌に用いられてきました。
その袖を外郎で表現しています。
桜が咲き始めたこの時期らしく、薄紅色でほんのりとした色合いに仕上げられているお菓子です。
菓銘衣手
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2019
43

花めぐり

京都に桜の開花宣言が出されて一週間が経ちました。
鴨川左岸の三条通から七条通にかけては『花の回廊』と呼ばれる桜をはじめとする四季折々の花を楽しめる散策路があります。

芽吹いたばかりの柳がそよぐ並木道。
所々で真っ白な花を咲かせているユキヤナギ。
あとは、少しずつ花開いてきている桜が満開となれば、『都の春』の風景が目の前に広がります。
京都市内は、今週末がお花見のピークとなり多くの観光客で賑わうことでしょう。

今回は花めぐりのあとに気軽に召し上がっていただきたいお菓子をご紹介させていただきます。。
こちらのお菓子を手にとった瞬間、どちらのお店のお菓子なのか直ぐに判るほど、美味しそうに感じる独特なやわらかさな感触。
その期待を裏切らない風味が口の中で広がります。

薄っすらとピンク色のぼかしが入った上用饅頭。
そこに焼印を入れただけの簡素な京菓子らしい意匠。
みなさん、それぞれの桜風景を思い浮かべながら召し上がっていただきたいお菓子です。
菓銘花めぐり
店名塩芳軒
住所京都市上京区黒門通中立売上ル飛騨殿町180
電話(075)441-0803
2019
410

さくら

寒の戻りが過ぎ去り、ようやく四月らしい気候となってきた京都市内です。
この寒の戻りのおかげで早咲き桜が長く楽しめました。
そして、待ちに待ったこの時。
あちらこちらにできた桜のトンネルを楽しむ人々。
桜の木の下で素敵な思い出はできたでしょうか。

この時期、和菓子屋には桜にちなんだお菓子が数多く並んでいます。
同じ桜を表現するにしても和菓子屋によって様々です。
みなさんにとっても親しみのある桜だからこそ、この時期は和菓子屋に立ち寄って楽しんでいただきたいと思います。
平成30年京都市『未来の名匠』に認定されたご主人が作る桜のお菓子は、とても可愛らしい雰囲気の意匠です。
菓銘さくら
店名笹屋春信
住所京都市西京区桂乾町66-1
電話(075)391-4607
2019
417

山吹襲

仁和寺の御室桜が見頃を終えようとしています。
こちらの桜が散り桜として参拝者を魅了する時、京都市内の本格的な桜シーズンは終わりを告げます。
これからしばらくは、サトザクラが京都の街を華やかに彩ります。

そして、忘れてならないのが山吹。
寺社の境内で新緑の葉に混じって、鮮やかな黄金色の花を咲かせて彩りを添えます。
京都では山吹の名所として、まず挙げられるのが松尾大社。
境内を流れる一ノ井川の水面を山吹色に染めた幻想的な光景を一目見ようと多くの参拝者が訪れます。
今年も山吹の開花がはじまっていますが、幻想的な光景となるには、まだしばらくかかりそうです。

今回は、山吹をイメージして作られた気品を感じるお菓子をご紹介します。
伝統的な山吹の襲の色目は、表に朽葉色、裏に黄色の組み合わせ。
その色目では、山吹が見頃の時期である晩春から初夏へと向かう頃としては少し暗めに感じます。
爽やかな印象になるような色目で仕上げたこなし製のお菓子です。
思わずうっとりとしてしまう意匠です。
菓銘山吹襲
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2019
424

花水木

晩春より、私たちの目を楽しませてくれるハナミズキ。
街路樹として植えられているハナミズキが花開きはじめています。
京都市内を散策していると、あちらこちらで鮮やかに咲く、ハナミズキの花を見かけます。

二条城と朱雀高等学校に挟まれた美福通(びふくどおり)にもハナミズキが街路樹として植えられています。
二条城の周りを散歩やジョギングする人々、朱雀高等学校の学生たちにとって、親しみ深い花ではないでしょうか。

すっかりと市民権を得ているハナミズキですが、そもそもはアメリカが原産です。
1912年に当時の東京市長であった尾崎行雄さんが、アメリカ合衆国ワシントンD.C.へソメイヨシノを贈ったお礼として贈られてきたのが始めです。
そこから、ハナミズキの花言葉は『返礼』『私の思いを受けてください』だそうです。

そのハナミズキのピンク色の花弁のように見える部分は総苞片(そうほうへん)です。
中心の塊が花序となります。

この時期の花として、とても馴染みがある花ですが、私の知る限りでは、意外にもハナミズキにちなんだお菓子はそれほど多くは見かけません。
その中の一つがこちらのお菓子です。
外郎でハナミズキを模ったものです。
優しい色合いと造形の美しさに、思わず見惚れてしまいます。
菓銘花水木
店名二條若狭屋
住所京都市中京区二条通小川東入る西大黒町333-2
電話(075)231-0616
2019
51

こいのぼり

新しい時代の幕開けです。
果たして、どのような時代となることでしょう。
近年は、目まぐるしいほどに文明が発展を遂げていますが、それについていくのが「やっと」といった感じです。
ニュースでもAIの話題が数多く採り上げられます。
ここから先は、想像もできないような時代となるのかと思うと少し心配になります。
便利であっても、とても無機質な世界。
そのような時代だからこそ、私たちは、今まで以上に人だけではなく、動物や植物などに対して思いやりをもって接していかなくてはならないのではないでしょうか。
次世代を担う子供たちに、大人たちは、言葉ではなく、暮らしぶりで伝えていく必要があるのではと感じています。
幼少の頃から、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に和菓子を食べた時間。
和菓子を介して多くのことを教えてもらいました。
青空を気持ちよさそうに泳ぐ鯉のぼりを見ると、柏餅を食べながら教えてもらったあの頃を思い出します。
5月5日は、『端午の節句』。
この日に鯉のぼりを立てるようになったのは、中国の故事に由来します。
黄河の急流にある竜門と呼ばれる滝を多くの魚が登ろうと試みまます。
その中で、鯉のみが登りきり、竜になることができたという話にちなんで鯉の滝登りが立身出世の象徴となりました。
「鯉のように滝を登って立派な大人になるんやで!」
と話かけてくれた祖母の言葉が思い出されます。
今年初めて販売される、こちらのお菓子は、こいのぼり(鯉)を表現しています。
鯉の頭部が無いと思われる方がいらっしゃるかも知れません。
その理由は、お菓子はあくまで口に入れるものなのでリアル過ぎて食が進まないようにならない為にだそうです。
頭部が無くても、躍動感溢れる姿を感じ取ることができるのではないでしょうか。
この時期にご家族で召し上がってみてはいかがでしょうか。
きっと、お子様の心に残る思い出となることだと思います。
菓銘こいのぼり
店名亀屋良長
住所京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19
電話(075)221-2005
2019
58

宮中の儀

新緑の5月。
京都の5月といえば、やはり『葵祭』。
平安時代より国家的行事として受け継がれている勅祭です。
5月1日の『競馬会足汰式(くらべまえあしぞろえしき)』、その後、『流鏑馬神事』、『斎王代禊の儀』、『歩射神事』、『賀茂競馬』と葵祭の前儀が行われました。
そして、次の日曜日(5月12日)には、荒御霊を御本殿に迎える大切な神事『御蔭祭』が下鴨神社で執り行われます。
その深夜には、上賀茂神社では御阿礼神事(みあれしんじ)が完全非公開で執り行われます。
この二つの神事が滞りなく終わると、あとは5月15日が天候に恵まれることを祈るばかりです。
5月15日に行われる祭儀は、本来『宮中の儀』、『路頭の儀』、『社頭の儀』の三つから成り立っています。
現在は、御所に天皇不在の為『宮中の儀』は執り行われておりません。
しかしながら現在も勅使がお見えになり『路頭の儀』、『社頭の儀』が執り行われています。
葵祭の路頭の儀に出てくる乗り物といえば『牛車(ぎっしゃ)』。
御所車と呼ばれ藤の花などを軒に飾り牛に引かせます。
そして、ふたば葵と桂の枝葉を組み合わせて作られた『葵桂』を装飾した行列が新緑の京都市内を進みます。
葵祭の象徴的な二色でつくられたこなしに、御所車の車輪(くるまのわ)をすり込んだお菓子です。
平安時代の優雅な雰囲気を感じられるお菓子です。
菓銘宮中の儀
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405
2019
515

一声

日中は初夏らしい陽射しが降り注ぐようになってきた京都市内です。
ツツジがあちらこちらで鮮やかな花を咲かせて街を彩っています。
個人的には、ツツジが咲くこの時期が一年で最も華やかなのではないかと思っています。

春の訪れを告げる鶯の鳴き声。
そして、夏の訪れを告げるホトトギスの鳴き声。
ともに季節の初めに聞く鳴き声として『初音(はつね)』と呼ばれてきました。
ホトトギスは、初夏のこの時期に季節を感じる鳥として古来より親しまれてきました。

今回は、ホトトギスにちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
ホトトギスは夜に鳴く鳥とされています。
『一声(いっせい)は月が啼(な)いたか時鳥(ホトトギス)』という出だしではじまる小唄があります。
三日月を羽二重餅、月を横切るホトトギスを大徳寺納豆で表現しています。
耳をすませば、夏の訪れを告げるホトトギスの鳴き声が聞こえてきそうなお菓子です。
菓銘一声
店名紫野源水
住所京都市北区小山西大野町78-1
電話(075)451-8857
2019
522

一雫

葵祭が無事に終わり、5月も残すところ10日ほどとなりました。
このところ挨拶の後に話題となるのが梅雨入りの時期。
今年の梅雨入りは、いつとなることでしょうか。
梅雨と言えば紫陽花。
紫陽花の花が開くのは、まだ少しあとになりそうですが、ヤマアジサイの変種である甘茶(アマチャ)の花が咲きはじめてきました。
甘茶の寺として有名な建仁寺の塔頭・霊源院では、甘茶の庭『甘露庭』の一般公開が5月18日(土)より始まっています。
新緑にそっと寄り添うように彩る可憐な甘茶の花。
禅寺にふさわしい光景が庭園に広がります。

今回は、その甘茶の花をモチーフにしたお菓子をご紹介させていただきます。
雨音が心地よい日なか。
可憐な甘茶の花へゆっくりと落ちる一雫(ひとしずく)。
そのような情景を表現した上用製のお菓子です。
菓銘一雫
店名長久堂
住所京都市北区上賀茂畔勝町97-3
電話(075)712-4405

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きょうのお菓子

月刊京都連載
和菓子歳時記

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